前日7月30日、優勝マジック「39」が点灯した後、若手記者を相手に「明日は栄枝(裕貴)の出番かな。背番号39やし」などと冗談を飛ばしたのである。若手は「おっさんが何か言うとる」という顔だったし、もちろん、こちらもそんなので決めるはずないと思っていたがフタを開けるとスタメンマスクは栄枝。驚いたが、もちろん、そんな理由ではない。
「リードも打席も歯がゆかった。勝負というところを突き詰めていかなければ」。指揮官・藤川球児は栄枝をそう指摘した。先発・伊原陵人と息も合わなかった部分もあっただろうが弱る広島相手にいきなり3失点。伊原の失策がなければどうなっていたかは分からない。それでも次世代の捕手として期待する球児の目にはそう映ったのだろう。
スタメンも異例だった。6番に左翼で中川勇斗を入れ、7番が栄枝。8番は前日、途中出場で光った熊谷敬宥を先発させた。この並びを見て、手厳しいファンの中には「捨て試合かも」と思った向きもいるかもしれない。首位快走の現状に加え、選手名だけ見れば、そう感じても正直、無理はない気もする。
だが、それは違う。もちろんスタメンマスクの続く坂本誠志郎は休養の意味があるのは間違いない。それでも遊撃手に関しては、この日は小幡竜平より熊谷がいいと感じた結果だし、中川にしても広島の左腕・森翔平相手では右打ちの利点を生かせ、ということだったはずだ。
敗戦のこの日、大きな声援が送られる場面があった。9回、阪神に復帰したドリスが登板したところ。そして7回、代打でこの日1軍に戻ってきた木浪聖也が代打に出た瞬間だ。木浪は言うまでもない23年日本一戦士の1人。今季も序盤は遊撃スタメンだったが打撃不振もあり、途中から小幡に譲る格好になっている。
いずれにせよ、これで「さあ、役者がそろった」と言いたいところだが、今季に限ればそうではないと思う。糸原健斗が抹消されたから言うわけではなく、球児は「スタメンは練習から調子の良さそうな選手を使う」ということで徹底しているからだ。
1~5番が固定できているからこそ、下位打線のところでそれは明らか。その意味で今季は「ベストメンバー」はないのかもしれない。その球児流で、マジックの消えた阪神は1日から長期ロードに出る。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




