中日投手陣の自責点は「1」だ。2、6回に出たチェイビスの2失策が失点につながった。
これで中日のチーム失策数は「47」に。無失策だった阪神のそれは「46」。試合前まで中日が最少失策だったが、これで阪神が上に出たのである。
打って、投げて、そしてしっかり守れれば、それは強い。その守りの部分を象徴したのが熊谷敬宥だったと思う。この日にFA権を取得した近本光司は、これまでの疲労を癒やすかのように欠場となった。その代わりに1番・遊撃でスタメン出場したのである。
もちろん今季初の1番打者だ。だが「自分は守備の人」と言い切る熊谷はまず守備でチームを引っ張った。驚かせたのは先発・ビーズリーが投げていた4回、1死一塁から石伊雄太を遊ゴロ併殺に取った場面だ。
バットが折れながら打球は二塁ベース上へ飛ぶ。これを熊谷は体を伸ばしてキャッチ。同時に右足で二塁ベースにタッチし、一塁へ転送した。一瞬でもズレていれば成立しないプレー。敵将・井上一樹も思わずリクエストをかけたが、足はきっちりベースを触っていたのである。
「ボールとタイミングよくいけるなと思ったんで。ボールを捕るのちょっと遅めに。あれが踏めてなかったらゲッツーじゃなかったんでよかったかな、と。(こういう形で併殺を決めたのは)あまりないですね」。名手・熊谷にして経験がないという華麗なプレーだったのである。
9回1死二塁の同点ピンチには細川成也が放った痛烈なライナーを完璧なジャンピングキャッチ。チームももちろん、自分自身も守備で流れをつくりながら6回にはダメ押しの5点目の適時打を放った。7回、及川雅貴が1失点したのでこれは貴重だ。
そんな熊谷が緊張したのはやはり「1番打者」の部分だ。「緊張します。近本さんの代わりにはなれないと思うんで。けど、いい経験ができました。若い選手も出てるんでね。チカさんより若いヤツらが必死になってがんばらないといけない」。そんな話もした。
これまで守備固め中心だったがここに来て存在感を示す熊谷。指揮官・藤川球児も「非常に見習うことが多いんじゃないですかね。なぜゲームに出て、最後までグラウンドに立てるのか、という」とたたえた。ここに来て「他球団ならレギュラー」などという声も聞こえてきそうな気配だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




