個人的な話から始めさせてもらえれば試合前から差し込まれていたのである。今季初めて甲子園を訪れたジャイアンツ。昨季までは坂本勇人、岡本和真と関西出身の看板選手2人が三塁側ベンチ付近で軽く雑談に応じてくれた。
しかし岡本は大リーグに去った。坂本はベンチを温めることも多い。どんな感じかなと思っていたがあいさつすると「久しぶりです」と笑顔だ。スターの貫禄か。「調子どない?」と聞くと「こんなんですわ」と手をヒラヒラ。関西人独特のノリである。
ところが、ここで坂本がドキッとすることを言う。「時々、読んでますよ。ネットで」。なんと。このコラムを読んだことがあるという。ホンマかいなと思ったが妙に二の句が継げなかった。関係者はともかく、選手からそう告げられるケースはあまりない。ひょっとして虎党か…?
試合の話である。こちらの動揺と阪神の敗戦は関係ないがおかしな流れの試合だった。序盤、才木浩人が打たれ、巨人に先制されたがもっと失点していてもおかしくない展開。5回まで7安打を浴びたが2失点だ。これは逆転できるで…。そんな確信めいたものを持ってゲームを追っていた。多くの虎党も同じだったのではないか。
はたして力投していた則本昂大が降りた途端、様子がおかしくなる。巨人の2、3番手を打って7回に一挙3得点で逆転。正直言って「勝った」と思った。しかしモレッタが浜風吹く球場で大城卓三に被弾。さらに9回には岩崎優が1失点の敗戦となったのだ。
いろいろと要因はあったと思うが強く感じるのは巨人は必死だ、ということである。1つのキーになったのは坂本か。9回1死から代打で岩崎から安打。代走を出した1死一塁から巨人ベンチは浦田俊輔に犠打で走者を進めた。プロではあまり見ない攻撃かと思ったが自分たちの流れに持ち込もうという意思を強く感じた。それが奏功した。
「展開ですね。巨人も全力で来ていますから。お互いにギリギリの勝負をしていくと。明日(15日)もそれが続くと。頑張りましょう」。指揮官・藤川球児もそれを理解してのコメントとなった。あえて言えば1試合2失策は今季初。それでも球児が言う「ギリギリの勝負」の中で引きずっても仕方がない。ベンチ全員が「挑戦者」の気持ちを忘れないことだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




