日刊スポーツ記者が全国の有望選手にスポットを当てる「ピカイチ打者編」。

 今秋ドラフト候補で全国最多の95本塁打を誇るのが、初芝橋本(和歌山)の主将、黒瀬健太捕手(3年)だ。すり足打法の1年時は16本だったが左足を上げるフォームに変え、2年の1年間で56本を量産。智弁学園(奈良)・岡本和真内野手(巨人)の打撃フォームも参考に練習を重ねた。

 初芝橋本・芝野恵介監督(35)は、黒瀬の写真を見て驚いたことがある。打者・黒瀬の後ろに座る相手捕手のミットが、閉じていた。捕手は投球を捕ったつもりでいるのに、投球は打球になり、はるかかなたに飛ばされている。「渋谷時代の中村紀洋選手(元DeNA)がそうだったと聞いたことがあります」と芝野監督。超高速スイングを物語るエピソードだ。

 昨秋の練習試合で1試合5本塁打と2四球をマークしたことも。72本塁打で迎えた年明けから「打球を飛ばす力は本物」とプロから注目されるように。黒瀬は「足の上げ方、タイミングの取り方を監督に指導していただいて、球をとらえる確実性、飛距離が伸びたと思います」と分析する。智弁学園で高校通算73本塁打をマークした巨人岡本の肩から上が動かない安定感あるフォームも研究した。

 木製でも金属バットと変わらない打球を打つが「公式戦は金属。ミスショットでチームに迷惑はかけられない」。主将の責任感を忘れたことはない。

 中学時代に最初に所属したチームが合わず、野球断念も考えた。手を差し伸べてくれたのが「貝塚ヤング」の監督で、ヤクルト川端の父末吉さん。「一緒に頑張ろうと野球の楽しさを思い出させてくださった。恩返しをしたい」気持ちを原動力に。春に痛めた右肩も回復し、強打の捕手で夏に臨む。【堀まどか】

 ◆黒瀬健太(くろせ・けんた)1997年(平9)8月12日、大阪・泉南市生まれ。新家小1年から「新家スターズ」で外野手で軟式野球を始め、同年中に捕手転向。一丘中では「貝塚ヤング」に所属。初芝橋本では1年春からベンチ入りし、同秋から正捕手。2年秋は県4強。好きな選手は西武森。50メートル6秒85。遠投100メートル。180センチ、94キロ。右投げ右打ち。