第97回全国高校野球選手権(甲子園、8月6日開幕)の各地区大会が今週末から本格化する。高校野球特集第3回は、プロ野球関係者を家族に持つ球児たちを、主にリストアップ。ヤクルト真中満監督(44)を父に持つ法政(西東京)の真中丈(たける)外野手(3年)は今夏、入学後初めてベンチ入りを果たした。父親と同じ左打ちの外野手は、昨年5月にマネジャーへ転身も、同11月から再び選手に復帰。背番号「20」を勝ち取った最後の夏にすべてをかける。初陣は12日、日大桜丘との2回戦だ。

 1度は“引退”も考えた真中が、ラストチャンスをものにした。苦労の末につかんだ念願の背番号。「続けてきてよかった。両親に試合に出ている姿を見せたい」と笑顔を見せた。

 入学後から1年間は、練習試合どころか紅白戦でもヒットを打てなかった。昨年5月には「限界だと思った」と退部を申し出た。チームメートに報告すると「涙を流してくれた仲間がいた」。厚い友情に感謝し、思いとどまった。

 持ち前の気配りと明るさで、周囲からマネジャーを勧められた。父に相談したところ、「向いてるんじゃないか」と背中を押され、裏方に徹することを決めた。

 選手復帰への思いをよみがえらせたのも、仲間と父だった。昨秋の都大会、チームは初戦から2試合連続のサヨナラ勝ち。続く準々決勝は、延長10回サヨナラで早実を破った。記録員としてベンチ入りしていた真中の手が震えた。「もう1度、選手として活躍したいと思った。父は驚いてましたけど」と振り返る。約半年のブランクを埋めるため、必死で練習に打ち込んだ。中学時代に“打撃コーチ”だった父の「腰の回転を意識しろ」という教えを思い出しながらバットを振り、手はマメだらけになった。

 今年3月、練習試合で初めて右前打を放った。帰宅後、すぐ父に報告した。すると「『初ヒットじゃないか?』と言われて。気にかけてくれてたんだと思った」。その後も「ベンチ、入れそうか? 頑張れよ」と声をかけられていたという。恩返しの時は来た。「この夏で、燃え尽きようと思います」。最初で最後の背番号「20」をつけた真中の戦いが始まる。【鹿野雄太】

 ◆真中丈(まなか・たける)1997年(平9)10月24日、東京・新宿区生まれ。小2から落合アポロで野球を始める。ポジションは主に遊撃手。中学ではオール落合に所属し、外野手としてプレー。家族は両親と弟、妹。174センチ、68キロ。右投げ左打ち。血液型A。