福島で会津農林が驚異の粘りをみせた。8、9回で4点差を追いつき、10回表に3点失うも裏に再び同点。最後は15回裏2死二、三塁から、1番鈴木頼樹(らいき)内野手(3年)が中前打を放ち、9-8で船引にサヨナラ勝ちした。

 3時間54分の死闘にケリをつけたのは、それまで7打席ノーヒットの鈴木だった。あと1死で再試合の15回裏2死二、三塁。「絶対決めてこよう」と3ボール1ストライクからの外角直球を捉え、中前へと思い切り打ち返した。「勝ちたいという気持ちが(チームで)1つになった」。32度の炎天下、体はバテても心は最後まで折れなかった。

 劣勢から驚異的な粘りを見せた。1-5と4点を追う8回裏に1死から3連打で3点。9回には相手の2失策を誘って1点を奪い、延長に持ち込んだ。だが延長10回表、一気に3点をリードされる。試合は決まったかと思われた。

 その裏の攻撃の先頭は、3番川綱寿晃内野手(3年)。「とにかく後につなごうと思ったら入っちゃいました」と左翼へ通算25号のソロホームラン。この1本で雰囲気が変わり、2死二、三塁から8番渡辺辰哉内野手(2年)の中前2点適時打で再び同点に追いついた。江川篤監督(37)は「感服です。爆発力にはすさまじいものがあった」と手放しでたたえた。

 辛抱強く守り勝つより、ミスをしても気にせずどんどん攻める「のびのび野球」がモットー。時に監督と選手が言い争いになることも。それだけ負けん気の強い選手がそろう。春の地区大会・喜多方桐桜戦では0-5から8回裏に11点を取り逆転勝ち。粘り強さが大一番でまた発揮された。

 試合後ナインは「疲れました…」と口をそろえたがみんな表情は明るい。延長10回途中から救援し、投打にフル回転の川綱は「ここから家は15分ぐらいなので」と疲れをものともせず、自転車に乗って球場を後にした。【高場泉穂】