今夏で勇退する渡辺元智監督(70)率いる横浜(神奈川)が、第1シードの相模原を破った。最速146キロ右腕の2年生エース、藤平尚真投手が、散発4安打完封。チームはこれで4試合連続無失点で、16強を決めた。

 相模原市の球場は1万6000人の満員札止めとなった。藤平は「こんなに大勢の中で投げるのは初めて。少し緊張しました」と、初回から得点圏に走者を進め、2回には右翼手と自らの失策から2死一、三塁のピンチを招いた。

 助けてくれたのは渡辺監督だった。「困った時は(ベンチにいる)監督さんを見ます。今日もジェスチャーで教えてくれました」。右腕が体から離れているしぐさを見て修正し、次打者を直球で中飛に打ち取った。その後は直球とこの冬覚えたフォークを武器に6奪三振。大事な試合で自身初完投、初完封をやってのけた。

 U15(15歳以下日本代表)のエースだった藤平が、入学後本格的に投球練習を始めたのは昨秋から。昨夏はベンチにも入らなかった。渡辺監督は「成長痛もあって無理をさせなかった。それが今日につながっている」と満足げに振り返った。名将最後の指揮が注目の的にもなっている。試合開始前には約1キロの列ができ、開始は予定の11時から10分遅れた。渡辺監督は「お客さんがたくさん入った中でも普段通りにできることが大事。力は間違いなくついてきている」と、誇らしげに選手を見つめた。【和田美保】

 ◆藤平尚真(ふじひら・しょうま)1998年(平10)9月21日、千葉・富津市生まれ。小1から野球を始める。大貫中では千葉市リトルシニアに所属し2年春に全国制覇。3年夏は関東大会で優勝し、全日本中学校陸上競技選手権大会の走り高跳びでは準優勝した。50メートルは6秒2。家族は両親。185センチ、79キロ。右投げ右打ち。