【2015白球メモリー:九里学園・村上佳希内野手(3年)】

 必死に声をかけ続けた。3-5の9回2死一、二塁、マウンドに駆け寄り2年生バッテリーを鼓舞する村上の姿があった。「自分は2年から試合に出ているので、自分からリーダーシップをとりたかった」。酒田光陵に敗戦はしたが、1安打3出塁で最後の夏に意地は見せた。

 村上の父重寿さん(44)は、89年夏に準優勝した仙台育英の正二塁手だった。同期で主将だった高橋左和明監督率いる九里学園に、仙台の親元を離れて進学した。「監督からは細部にこだわれと教わった。身の回りのことを徹底的にやった」。1年秋からレギュラーをつかみ、新チームから副将を任されるまでになった。

 重寿さんも息子の姿に成長を感じ取っていた。「中学までは気持ちを表に出すタイプじゃなかったけど、自分から声をかけて積極的になっていた」。偉大な父を超えられなかったが、成長した姿は見せた。「最後に自分たちの野球ができて悔いはない」。全力を出し切った村上に涙はなかった。【高橋洋平】