大阪大会で、来夏が最後の公式戦になる危機に直面するPL学園が、2試合連続コールド勝ちした。87年夏の全国制覇を知るOBの元ヤクルト宮本慎也氏(44=日刊スポーツ評論家)が見守る前で、みどり清朋に快勝。現在の苦境も「得難い経験と思って頑張れ」という大先輩のエールに応え、6年ぶりの甲子園に前進した。

 2試合目で、早くも夏3号が飛び出した。3-0の3回2死二塁で、大和久(おおわく)広輝外野手(3年)が左翼へ2ラン。「(18日の)1試合目よりはリラックスして打席に入れた。自分のスイングができました。つないで行く意識づけがチームでできています」。高校5号を含む3安打2打点の6番打者は、9安打で8点を奪った攻撃をそう語った。

 継投も盤石だった。先発・難波雅也(同)が4回を1安打9奪三振で投げきり、4人で14奪三振無失点リレー。3番手で今夏初登板のエース山本尊日出(たかひで=同)は「夏は多くの投手の力が必要」と、5人の投手陣で激戦を戦い抜く覚悟を明かした。

 2代目校長監督の草野裕樹監督(64)は「前の試合よりは落ち着いてやれましたね」と胸をなでおろしたあと「宮本君が来てくれてましたね」と笑った。炎天下のスタンドで、宮本氏が後輩の戦いを見つめていた。「大阪桐蔭という分厚いカベが残りましたからね。でも甲子園を狙えるチャンスがないわけではない。実力はあると思います」。宮本氏は昨夏の大阪大会決勝・大阪桐蔭戦にも駆けつけていた。

 昨年は「PL復活」への再出発の夏だった。不祥事による出場停止を経て2年ぶりに大阪大会に臨み、準優勝した。だが昨秋、教団の指示で突如、部員募集を停止。来春の一般生徒募集が始まった今も部員募集の指示はないまま。現場は停止は継続と覚悟する。1年は不在で、このままなら2年が退部する来夏大阪大会が最後の公式戦になる。

 「なんとか野球部は残ってほしい。甲子園に出ればきっかけになる。自分たちで考えて試合をするのも、なかなかできないこと。得難い経験と思って力に変えてほしい」。宮本氏も祈る思いだった。「試合前に、宮本さんが球場に来られたのが見えました。心強かった」と謝名堂陸主将(同)。勝ち進むことで何かが変われば。使命を背負った夏が続く。【堀まどか】