横浜が終盤に3点差をひっくり返し、横浜隼人を破り2年ぶり4強を決めた。今夏で勇退する渡辺元智監督(70)の勝負手が決まり、接戦をものにした。

 7回に1点を追加され、その差は3点に開いていた。8回表。名将が今大会初めて活を入れた。「勝ちにいくぞ」。渡辺監督の言葉に導かれた横浜ナインが、奮い立った。「気持ちで打ちました」と、1死一塁から戸堀敦矢内野手(2年)が左翼席へ公式戦初となる2ランを放った。1点差とし、なおも1死一、三塁。同点のチャンスで、渡辺監督が動いた。

 打席に立つ5番石川達也投手(2年)の初球にスクイズのサインを出した。「石川はいいバッターだから、相手は打ってくると思っていると思った。勝負をかけた」。高め直球を一塁手の前に転がし、同点の走者が本塁へかえった。監督をして「気の強さが売り」と評する石川は「高校に入ってスクイズは失敗したことがない。絶対に決めてやると思った」と持ち前の強心臓を発揮。投げては先発し2度マウンドに上がり投打で役目を全うした。

 思いはひとつだった。「ここを監督さんの最後にするわけにはいかない」と救援したエース藤平尚真投手(2年)が8回無死一、二塁のピンチをオール直球勝負で3者連続三振。力投を受け、9回2死二塁では増田珠(しゅう)外野手(1年)が粘り、2-2からの8球目を右中間へ流し、勝ち越しの三塁打を放った。右脇腹痛で痛み止めを打つ石川を始めケガ人は多数いるが、1日でも長い夏にするべく、歯をくいしばった。前日23日に食べた「うなぎ」もパワーの源となった。

 ノーシードから6試合、すべてで試合前ノックを打つ渡辺監督も「足腰が痛いし体はガタガタだよ」と苦笑いする。自宅にマッサージ師を呼び体調を整えながら戦っている。「負けることは考えなかった。重圧の中で選手たちはすごくたくましくなってきた」。2戦連続で1点差ゲームをものにし、甲子園まであと2勝となった。【和田美保】