日大藤沢が「足攻」で3年ぶり4強を決めた。日大藤沢が16安打に6盗塁を絡め、山手学院に快勝した。中日山本昌の弟で、捕手出身の山本秀明監督(45)が捕手目線の盗塁術を仕込み、6盗塁中4盗塁をディレードスチールで決めた。

 2回1死一塁、日大藤沢・大倉和樹投手(2年)に投げられた2球目だった。ミットにボールが入る瞬間、一塁走者の頼住裕太外野手(3年)が二塁へスタートを切った。捕手はノーマークでディレードスチールが成功し、3点目となる貴重な追加点の足掛かりとなった。その後もチーム全体で積極的な走塁を徹底し、この回だけで3盗塁を成功させた。

 この試合で6盗塁を成功させ、うち4盗塁がディレードスチールだった。山本監督は「打てないからやっているだけ」と控えめだが、得点につながった。この日2盗塁した中村友志外野手(3年)は50メートル走は6秒4と特別速いわけではないが、2回と4回にディレードスチールを成功させ、チャンスを広げた。「ヒット0本でも走塁で崩して1点を取ろうという意識が強い」と自信を口にした。

 捕手目線が秘策だった。日大藤沢OBで、捕手として三菱自動車川崎で都市対抗4強の実績を持つ山本監督が、自身の経験を生かした。投手が投げた瞬間に走りだす通常の盗塁よりも「ミットにボールが入る瞬間が死角になりやすい」という考えのもと、チーム内で走りだすタイミングを0秒95~1秒05遅らせることを徹底。捕手が目線を切った瞬間を狙うディレードスチールの練習を繰り返したことがこの試合で功を奏した。

 準決勝は昨夏王者の東海大相模だ。山本監督は「うちより力があるので、挑戦者のつもりで全力でぶつかっていきたい」。足技を絡めて、プロ注目の2枚看板を攻略する。【青木沙耶香】

 ◆ディレードスチール 通常の盗塁は、投手が投球モーションに入った瞬間にスタートを切るが、ディレードスチールは、スタートを遅らせた盗塁。一般的には、捕手が捕球する直前にスタートを切ったり、投手に返球する際のスキをついて走るケースが多い。