やっぱり、期待に応える男だった。早実・清宮幸太郎内野手(3年)が、香川県で行われた招待試合の丸亀城西戦で2本塁打を放ち、高校通算本塁打を103本に伸ばした。招待試合は、昨年6月の三重県以来、訪れた6県すべてで本塁打を放ち、各地で期待に応えて見せた。これで高校通算最多本塁打まであと4本に迫った。

 清宮が約3500人の観客を手ぶらで帰らせるはずがなかった。「明日は打ちます」。前日17日の2試合ノーアーチ後、報道陣の前で力強く宣言した言葉を実現した。西東京大会前最後の招待試合。丸亀城西戦の4回にバックスクリーンへ飛び込む102号を放ち、6回にはそのわずか左へ103号を放った。

 清宮 状態が良くなっている感じがあったし、そんな予感がした。

 全国のファンに本塁打を届けた。今年、熊本、沖縄、愛知と続いた招待試合すべての県で本塁打を放った。昨年も含めれば6県連続だった。「全部、思い出に残っています。各地で打てたのはうれしいです」と、ファンの期待に応え続けた。さらに、この日は父の日で「打った時に思いました」と、ラグビー・ヤマハ発動機監督の父克幸さん(49)へ感謝の気持ちもアーチに込めた。

 山本大貴(兵庫・神港学園)が記録した107本の高校通算最多本塁打まであと4本に迫った。清宮はこの日、中堅方向への本塁打について「たまたまです。センターに飛んでいった感じ」と話したが、パワー、技術ともにプロも認めるハイレベルなものだ。この日の2発と同じ、バックスクリーン左へ運んだ今春の東京大会決勝の日大三戦(神宮)の1発について、巨人高橋監督は「左打者であの距離はなかなか出ない」と感心し、巨人阿部も「えぐかった。プロでもなかなか見ない」と絶賛した。

 怪物のラストサマーが、いよいよ幕を開ける。本塁打は量産しても、勝負運は西東京大会に残しておいた。1点を追う9回2死から1、2番がつなぎ、サヨナラの絶好機を迎えたが、二直で凡退した。「夏にとっておくということで。また、こういう場面が絶対に回ってくる」。全国のファン、家族、プロの心も揺さぶる放物線で、高校最後の夏を熱くする。【久保賢吾】