センバツ2強の大阪桐蔭、履正社を倒すまで負けられない! 大阪大会で、昨秋府王者の上宮太子が9回2死まで追い込まれながらサヨナラ勝ちした。序盤で0-5の苦しい展開になったが、3回1死満塁から登板したエースの森田輝(ひかる)投手(3年)が逆転を信じて無失点投球を続け、劇勝を呼んだ。

 降りしきる雨にも、5点のビハインドにも、上宮太子ナインは気持ちを切らさなかった。1点差まで追い上げた9回無死一、二塁。連続三振を喫した。あと1アウトで負ける。球場に響く相手の鳳応援団の歓声。上宮太子ナインが祈るように見つめる前で、打席に立った前田淳志外野手(3年)は冷静だった。

 「フォークしかないな」。狙いを定め、カウント3-1からの5球目を振り抜いた。打球は左翼手を越え、サヨナラの2点適時打に。その瞬間エースの森田は号泣した。泣きながら「ありがとう」と前田に声をかけた。

 昨秋府王者として、頂点を見すえた戦いだった。日野利久監督(49)は「相手どうこうではなく、7月の後半に森田の調子を合わせようと。5点までは我慢しようと思っていた」。エースを温存し、3投手で継いだが3回途中までで5失点。森田はブルペンで2、3球しか投げていなかったが「行けます」と直訴した。マウンドに上がって遊飛と三振で3回を切り抜けると、8回に代打を送られるまで無失点。「自分がチームのエースなので、ここで抑えないといけない」。そんな姿に攻撃陣も応え、4回に2点、8回に1点と得点を重ねていった。

 負けられなかった。ナインには決勝で履正社を倒し、昨秋の大阪を制した自負がある。近畿大会で敗れ、今春のセンバツに出場したのは大阪桐蔭と履正社。決勝はその両チームの大阪対決となった。森田はそのセンバツ決勝の映像を5回見た。「次当たる時は絶対勝つ」と闘志を燃やす。上宮太子が苦しい3時間15分の試合を制し、頂点へ駆け上がる勢いを手にした。

 ◆森田輝(もりた・ひかる)1999年(平11)6月26日、大阪府生まれ。阿倍野小2年から「オール阪南野球クラブ」で野球を始める。阿倍野中では「大阪生野シニア」に所属。上宮太子では1年夏からベンチ入り。最速143キロ。50メートル走6秒4。遠投100メートル。171センチ、65キロ。右投げ右打ち。