開校3年目のふたば未来学園(福島)が悲願の夏初勝利を快挙で成し遂げた。エース左腕・草野陸世(りくと)投手(3年)が9回を88球で抑えきるノーヒットノーランを達成。3-0で福島北を破り、夏の大会では初めて校歌を歌い上げた。同校は、東日本大震災と原発事故の影響を受け、福島県双葉郡の県立高5校を統合する形で、15年春に開校した。東日本大震災から6年と4カ月のこの日、復興半ばの地元に明るい未来の風を届けた。

 ノーヒットノーランよりも、夏1勝の喜びが勝っていた。草野は、校歌斉唱のため整列し、仲間から「ノーヒットノーランだな」と祝福されて初めて、記録達成を知った。「(4四死球と)走者を出していたので、そうとは思わなかった。1勝もできないで終わるのはつらいので、最後までエースらしく全力で投げようと。野球ができる幸せを感じながら投げることができた」と、はにかんだ。

 2年前、1期生として遠藤和明主将と2人だけで野球部を立ち上げた。野球未経験者を含め17人(うち女子5人)が集まったが、ノックの飛球を捕り損ねて頭に当てる部員がいるなど前途多難。1年目の夏は南会津に1-12でコールド負けし、当時身長154センチだった草野も試合途中でフラフラになり、1イニング8失点を喫した。

 しかし、そこからチーム一丸となって猛練習を重ねた。草野は昨年6月にサイドスローに転向。西武十亀の動画を見て研究を重ね、緩急を使った投球を心がけるようになった。昨年は初戦で強豪・学法石川に0-5と善戦。身長が163センチに伸びた今夏、最速117キロの直球に60キロの緩いカーブを織り交ぜ、わずか88球で快挙を成し遂げた。

 荒峰雄監督(54)は「1年のときは赤ちゃんのようだったけどエースらしく育ってくれた。入学したときのことを思うと夢にも思いませんでした。出来過ぎです」と話した。主将の遠藤も「3年間つらいこともたくさんあったけど、(草野と)2人で工夫してきた」と振り返った。