名門の掛川西が、7-0の7回コールドで浜松開誠館を破った。相手は、元プロ野球選手の中村紀洋氏(43)が非常勤コーチに就任。打力向上が伝えられる中、川合勇気投手(2年)が1安打に封じた。打線も、1回裏に川島瑞希内野手(3年)が先制適時三塁打を放ち、勢いに乗った。昨年は初戦敗退だったが、転じて好発進となった。

 7回表1死一塁、川合が相手の4番を併殺打に仕留め、掛川西のコールド勝ちが成立した。瞬間、スタンドから盛大な拍手が送られた。生徒約700人を含む応援客約3000人は一塁側席に収まらず、急きょ外野席を開放。例年以上の期待を背に、木村幸靖監督(36)は試合を冷静に振り返った。「立ち上がりの悪さは分かっていたので、チームは慌てなかった。今年は選手が自信を持っている。今日は安心して見られました」。

 ピンチの後のチャンスをものにした。1回表、暴投で1死三塁になったが、川合が3番、4番を抑えて切り抜けた。そして、1回裏の1死三塁から、川島が左中間を破る先制三塁打を放った。「何が何でも打つ」と高めのチェンジアップを捉え、三塁上で喜びを爆発させた。「あまりにうれしくて、出ちゃいました。本来は次のプレーを考えるために喜ばないんですが…」。

 指揮官の言葉通り、今年の掛川西は好選手がそろっている。特に3年の5人(川島、今駒郁希捕手、大本遼内野手、松本拓己外野手、沢崎真福外野手)は、1年だった2015年秋、県大会優勝を主力で経験している。結果、掛川市民、OB、関係者の期待感が集まったが、昨夏は浜松学院との延長再試合の末に初戦敗退。以降も県大会の優勝争いに絡めずにいた。

 当時、5人は重圧に押しつぶされそうになっていたという。だが、今春の県大会後に渡辺公登主将(3年)が5人に「考え過ぎ。打てなくてもいいじゃん」と伝えた瞬間、全員が呪縛から解放されたという。川島は「自分たちの代になり、勝てずに苦しんだが、春以降は良い練習ができています」と、その「魔法の言葉」に感謝している。

 狙うは当然、1998年(平10)夏以来19年ぶりの甲子園出場だが、川島は「去年は先を見すぎていた。目の前の試合に集中するだけです」と言った。考え過ぎず、「1球入魂」で掛西ナインが前進する。【大野祥一】