完投まであと1アウトだった。17日に行われた大阪大会2回戦。守口東の先発藤沢憲投手(3年)は、今春センバツ準優勝の履正社相手に果敢に立ち向かっていった。

 四本勇志監督(29)によると藤沢は「初回から飛ばしていきます」と宣言していた。プロ注目のスラッガー、履正社の安田尚憲内野手(3年)とも、逃げずに勝負する意気込み。四本監督も「日本を代表するスラッガーになる選手と対戦するなんて人生でなかなかない事。藤沢にとって、今後プラスになる。『逃げるな』と言っていました」と背中を押した。

 その言葉通り、藤沢は4回まで3安打2失点と好投した。安田相手には1四球出したものの、他の3打席は直球を主体に真っ向勝負。3打数3安打を許したが、マウンドで堂々とした姿を見せていた。

 異変が起きたのは0-8で迎えた6回2死だった。6番打者に2球目を投じたところで、藤沢はマウンドに座り込んだ。足がつった様子で、懸命に足を伸ばしていた。数分後立ち上がり、審判からボールを受け取り投球を始めようとした。しかし1球なげるとよろめき、1人では歩けず、味方に両肩を支えられながら無念の降板となった。

 藤沢に代わって登板したのは、ライトを守っていた岡田元汰外野手(3年)だった。これまでも藤沢から岡田への継投が、守口東の方程式。岡田は「藤沢が頑張っていた。いい試合を作ってくれた」と気持ちを込め、3球で三振を取った。

 0-8で7回コールドとなったため、岡田が取った1アウトが「最後のアウト」。四本監督は「足をつったみたいです。最後まで1人で投げさせてあげたかった」と号泣していた藤沢を思いやった。

 「ずっと笑顔で試合をしよう」と守口東ナインは決めていた。攻守交代の時も、藤沢に代わって岡田がマウンドに行く時も、笑顔だった。

 「コールド負けでしたけど、今までの野球人生の中で、一番誇らしい、素晴らしいゲームでした」と四本監督は振り返る。

 球場にいた多くの人が、そんな勇姿を温かく見守っていた。【磯綾乃】