2年ぶり26度目出場の仙台育英(宮城)が日本文理(新潟)を1-0で下し、3回戦に進出した。エース左腕長谷川拓帆(3年)が9回7安打5奪三振、109球で完封。12日の1回戦(滝川西)の先発6回無失点に続き、計15イニング連続で0封した。明日19日の3回戦では、今春のセンバツ王者大阪桐蔭と激突する。東北勢が3回戦に4校残ったのは15年以来2年ぶり。今日18日に青森山田が東海大菅生(西東京)と戦う。

 最後は自分を、そして仲間を信じきるしかなかった。1-0の9回2死一、三塁。長谷川は持てる力を振り絞り、左腕を思い切り振った。139キロ直球を2球続けて簡単に追い込むと、4球目に136キロ直球を内角高めに投げ込み、相手のバットは空を切った。

 「緊張というよりかは、最後のピンチを楽しむことができた。周りもしっかり守ってくれると思っていた。負けないための守備をやっている。数え切れないファインプレーがあった。次も全員で協力してやっていきたい」

 味方に助けられた。初回1死二塁では、中前に落ちる当たりを二塁手の斎藤育輝(なるき、3年)がスライディングキャッチ。すぐさま二塁に投げて併殺を完成させてからは、波に乗った。9回の2安打を浴びた直後の伝令では、背番号11の佐藤令央投手(3年)が帽子のひさしの裏に書いてある「All Izz Well」の言葉を見せ、リラックスさせてくれた。今春のセンバツ期間中にチームメートと一緒に見たインド映画のタイトルで、邦題は「きっと、うまくいく」。長谷川は“ピンチが楽しい”と思えるほど、マウンド上で開き直っていた。

 「どんな困難があっても、最後はうまくいくと信じていれば、うまくいく。ピンチでも、自分たちがやってきたことを信じてうまくいくと思えば、成功すると思う。それが野球にもつながっている」

 自分を信じ切った男は強い。甲子園に入ってからは絶好調だ。宮城大会では制球が定まらなかったが、この日は2四球、109球で投げきった。連続無失点は15回まで伸ばし、自ら「95点」と採点した。佐々木順一朗監督(57)も「これだけ制球がいい長谷川は久しぶりに見た。こんな試合展開になるとは思ってなかったからドキドキした。継投も考えていたけど、この調子では代えられなかった」と最大級の賛辞を送った。

 3回戦の相手は今春のセンバツ覇者大阪桐蔭。長谷川は力を込めた。「走攻守にトップレベル。相手を倒すことだけを考えて、挑戦者の気持ちで向かっていく」。己を信じ、仲間を信じて戦場に乗り込む。【高橋洋平】