名は体を表すというが、ドラフト指名を待つ佐渡・菊地大稀(たいき)投手(3年)の名の由来は、「稀(まれ)に見る大きな人になってほしい」という両親の願いが込められている。佐渡からプロ野球選手誕生となれば史上初。体も先祖代々のDNAを受け継ぎ、185センチ、81キロの均整のとれた体に育った。

 長身という意味では、「大家族」である。父正博さん(50)は176センチ、母美佐子さん(50)も169センチとこの世代としては大柄で、母方の祖父も178センチあった。ただ体重制限がある柔道を幼少期から続けたことで、太らない体質になっていた。高2で70キロ台前半。体重がボールに乗らず痛打されることが多かった。

 心身とも「自己改革」に努めたのは昨秋から。宮木洋介監督(32)は「新チームのミーティングで『自分が新潟県で一番の投手になる』と言った。自分が中心にいても、そういう言動ができる子ではなかった」と、菊地の決意を鮮明に覚えている。2年秋の北支部3回戦で、同じ島内の佐渡総合に1-9でコールド負け。0-0の6回に突然乱れ、この回だけで9失点した。宮木監督は「素材として持っていても、本当に伸びたのは、新チームになって負けてから」と、野球に取り組む姿勢が変わった。

 選手の中でも平均以下だった食事量は、ご飯だけで1日5合を取るようにし、一冬で10キロ近くアップ。フォームも初めて本格的な指導を受け、「ストレートの質が変わった。力を込めると上に抜けていたのが、下に抑えが利くようになった」(宮木監督)と、心技体で成長した。それでも、変化球はプロ水準に遠く、筋力も高校生の平均レベル。「今の上半身を見ても、体つきは高校生にもなっていない」(宮木監督)と、まだ線の細さも否めない。菊地も自覚し、今秋から本格的なウエートトレーニングを始めた。

 県内の公立校では野球部員の減少が続いており、佐渡島内の高校ではその傾向が強い。菊地は「自分がプロで活躍することで、佐渡の子供たちが野球を好きになってくれれば」と願う。宮木監督は「(期待を)意識するな、というのは無理。そもそも、彼がプロを選んだ理由の1つが『佐渡のために』ですから。それを抑えることはできない」。プロ側の評価は、大きな伸びしろを秘めた原石としての魅力。未完の大器から、大器晩成へ-。輝く日まで、タイキは自分磨きを続ける。【中島正好】