激しい消耗戦の末、東海大相模(神奈川)が散った。4点リードで迎えた8回2死二、三塁。斎藤は3番の林に、1ボールから高め直球を投じた。つり球のつもりが、思い切り右翼へ引っ張られた。「あのバッターにあの球を打たれて慎重になった。攻めのスタイルが貫けなくなった」。この回一挙4点を奪われ10-10の同点になった。自分の投球より、相手の技術が上回っていた。

 延長10回。勝ち越され、なおも2死二塁で6番の黒川にも、ボール球の高め直球を捉えられた。「変化球についてこられて、真っすぐを投げざるを得なくなった。高めは、いつもならファウルか空振りを取れるところ。投げるボールがなくなった」。母のいとこでタレントの井森美幸(49)からは常々激励を受けた。日誌には毎日「打倒・大阪桐蔭」と書き続けたが、戦う前に負けてしまった。「今日は相手が上。自分は状態が上がらずに終わってしまった。真っすぐで空振りが取れるようレベルアップしたい」と夏への課題を挙げた。

 必死に戦った選手の思いを門馬敬治監督(48)が代弁した。「ボール球を打つ強さは練習していないとできない。どこまでゾーンを広げていいか、バッテリーも苦しかったと思う」。初回に3連打から4点を先制。最大5点のリードがあったが、守備の乱れをきっかけにひっくり返された。「選手のミスは僕のミス。この負けで選手は涙を流していた。本気の経験は生かされると思う」。2時間48分の激戦を肥やしにして夏、舞い戻る。【和田美保】