第100回全国高校野球選手権記念大会(8月5日開幕、甲子園)の青森大会が9日に開幕する。「白球にかける夏」第3回は、県内有数の進学校として、文武両道で58年ぶり5度目出場に挑む青森を特集する。今春は県4強で、東北大会出場にあと1勝まで肉薄。14年に同校13年ぶりの夏決勝進出を見て、「打倒私立」を胸に集まったメンバーの結束力は強固だ。記念の夏に、古豪復活を成就させるつもりだ。

 青森の総仕上げとなる6月中旬の校内合宿は、1人30分間の特別守備から始まった。技術だけでなく、夏への気持ちも高める“儀式”。泥だらけになりながら、左右にボールを追い続けた。主将の田中琉道内野手(3年)は「あらためてスイッチが入りました。自分たちは青高(せいこう)の準優勝を見て『私立を倒して甲子園に行きたい』と思って入学した世代。100回大会で達成できればうれしい」と意気込んだ。

 昨秋、県大会準々決勝で八戸学院光星に6-7の接戦を演じた。今春は4強進出。準決勝で弘前東に0-10、3位決定戦で弘前工に2-6と敗れ、東北大会出場をあと1歩で逃す悔しさも味わった。「私立に比べ選手層は薄い。だからこそ、お互いが指摘しあって、個人能力を上げて結束させないといけない」。昨秋以降、グラウンド内外で厳しく声を掛け合い、高め合ってきた。行き過ぎてケンカになり、3年生同士が約2週間、険悪な雰囲気になったこともあった。だが、田中主将を中心に「甲子園に行くために」と冷静に本音をぶつけ合い、結束はより高まった。

 県内随一の進学校でもあり、勉強との両立も力に変える。「1番遊撃」を担う須藤広暉(3年)は「勉強も野球も頑張って光星や山田に立ち向かう姿が格好良いと思う。野球少年の憧れる野球部にしたい」。限られた時間の中、授業中での習得を重要視し、合宿中にも食堂で勉強時間を設けて部員同士も切磋琢磨(せっさたくま)してきた。

 12日の初戦2回戦では、青森東と七戸の勝者と対戦する。順当なら準々決勝で青森山田、準決勝で八戸学院光星の厚い壁が待ち受けそうだ。田中主将は「勉強を頑張った時は、不思議なもので野球でも良い打撃ができたりするんです。県優勝で、町の方々にも喜んでほしい」。文武両道で、高校球児の手本となる成功をつかみとる。【鎌田直秀】

 ◆青森 1900年(明33)創立。普通科のみ。生徒数は835人(うち女子431人)。野球部は1903年(明36)に創部し、夏4度の甲子園出場。主な卒業生は太宰治(小説家)、寺山修司(劇作家)。所在地は青森市桜川8の1の2。宍倉慎次校長。