北の大地から一番乗りの凱歌(がいか)が聞こえた。第100回全国高校野球北北海道大会の決勝戦が行われ、旭川大高が5-3でクラークを破り、9年ぶり8回目の甲子園切符を手にした。

 「ヨッシャー!」。剛腕エースの雄たけびが旭川スタルヒンに響いた。9回2死一塁。旭川大高の最速146キロエース右腕、沼田翔平(3年)が最後の打者を遊ゴロに仕留めた。スコアボードに向かって両腕を上げると、ナインが一斉に集まり次々と抱きつかれた。決勝の大舞台で9回6安打3失点の完投勝利に「わけがわからないくらいうれしい」。校歌を歌い終えると、自然と涙がほおをつたった。

 130球完投は3回が起点となった。先頭打者の6球目は、この日最速となる144キロを計測。その後はフォームの確認であえてスローカーブを投じ「力が抜けて直球が良い感じになった」。本人は知らなかったが、それは大谷翔平(エンゼルス)らプロもよく行う調整法。決勝のマウンドで、自ら気づき、完投へとつなげた。

 もしかしたら、高校野球ではなく春高バレーの「聖地」に立っていたかもしれない。草や白樺のアレルギーがあるため、小学時代は屋外競技の野球ではなく、屋内でプレーできるバレーボールに熱中した。タンスに頭をぶつけるほど自宅で練習に励み、北北海道大会で優勝したほど。中学にバレー部がなかっため、野球へと転じた。旭川大高進学後は、甲子園への憧れが強くなった。「ここに来て良かった」と、しみじみ振り返った。

 甲子園には過去、夏7度の出場を誇る。だが、白星は93年が最後と約四半世紀、遠ざかっている。「あの舞台で自己最速が出るか楽しみ。そして、勝ちたいですね」。聖地に旭川大高と沼田の名前をとどろかせるのが、今日22日からの目標になる。【西塚祐司】