中越が2年ぶり11度目の優勝を決めた。初優勝を狙った新発田に10-1で快勝した。エース山本雅樹(3年)が前日23日の準決勝・新潟産大付戦に続く完投勝ち。6安打1失点、無四球で11奪三振の快投を見せ、100回記念大会の新潟の夏を締めくくった。11安打10得点の打線は3回表に先制した後、中押し、ダメ押しと隙を見せなかった。中越は2勝した94年以来の甲子園勝利を目指す。

 フィニッシュは全力で右腕を振っての直球だった。山本は新発田の最後の打者で、猛暑の中で投げ合った当摩信之介(3年)を空振り三振に仕留める。本塁に背中を向けながら、ガッツポーズ。そこに捕手の小鷹葵主将(3年)が抱きついたのを皮切りに、中越ナインの歓喜の輪ができた。

 「あ、終わったんだな、という感じ。試合終了の瞬間は、優勝したというのが浮かばなかった」。チームメートに囲まれ、ようやく頂点に立ったことを理解した。それほど試合に集中していた。「あまり球が走っていなかった」。140キロを連発するいつもの投球ではなかった。前日23日は新潟産大付相手に150球の熱投で6安打2失点の完投。体の重さ、球威のなさ。連投の疲労は隠せない。

 それでも焦りはなかった。「低めに変化球を集める」。直球を見せ球にスライダーで低めをつく。「丁寧に1人ずつ、アウト1個ずつ」。その結果が新潟産大付戦の10個を上回る11個の三振の山。逆に四死球は3からゼロに。準決勝後、本田仁哉監督(41)に「(決勝も)行けるか」と聞かれると、「行きます」と即答した。試合前に継投を考え、「いけるところまで山本で行くつもりだった」という本田監督も、最後は安心してエースに任せた。

 背番号「1」を背負った夏、「重かった」と言う。昨秋の新チーム結成時のエースで2枚看板の左腕・山田叶夢(3年)が左ひじを故障。本調子からは程遠い状態のまま夏の大会に入った。山本も春季大会で左ふくらはぎを負傷。急ピッチで夏に合わせた状態だった。それでも「山田の分も自分が投げないと」。今大会6試合中5試合に登板。2回戦の三条戦で6失点した後、体の開きを調整。準々決勝の長岡大手戦後は酸素カプセルに入って疲労回復に努めた。エースの自覚が細かな調整に表れた。

 チームにとっては昨年の雪辱を果たす優勝だ。昨年の決勝、日本文理に4-6で敗れた。当時のベンチ入りメンバーは山本、小鷹主将ら6人が残っている。「選手が悔しさを忘れずに1年間取りくんできた成果」。本田監督はナインの精神的な成長に目を細めた。

 中越は県内最多の11度目の優勝を決めた実力を、今度は甲子園で発揮する。一昨年、現3年生は観客席で応援していた。山本は「今度は自分が投げたいと思って見ていた」。それが現実のものになる。「もちろん甲子園で勝つことが目標」。100回記念大会、中越の94年以来の勝利のため、エースが聖地のマウンドに立つ。【斎藤慎一郎】