済美(愛媛)の4番池内優一内野手(3年)はプレーを断念した友に白星を届けた。初回に犠飛でチームに先制点をもたらす。「バットにボールを乗せる意識だった。あの1点があったから、逆転されても焦りはなかった」。逃げ切り勝ちに貢献した。

 池内は夜間の自主練習でバットを振り続けた。打撃投手を買って出たのが、記録員の向井太陽(3年)だ。遅い時は夜11時まで投げた。「お前が打たな勝てん」。向井は遺伝性の色覚障害がある。緑色が茶色に見えたり、グラウンドの白線や雲とかぶると、白いボールが見えなくなる。昨秋は背番号「3」をつけたが、県大会準決勝でボールを後逸。「このチームで甲子園を狙いたかった。自分のエラーでみんなが泣くのは嫌だった」。昨秋にマネジャーに転向した。

 「まずは1勝おめでとう!」。試合後に向井は池内にそう声をかけた。チームは2年連続の初戦突破を果たした。2人の夢はまだ続く。【磯綾乃】