大阪桐蔭(北大阪)春夏8度目の決勝進出を決めたのは、石川だった。5回、打って守りのミスを取り返した。2-1と勝ち越した直後の5回表の一塁守備で、一塁走者に同点の生還を許す三塁への悪送球。だが雪辱の機会は、すぐに来た。その裏2死満塁で内角高めの直球にバットを振り抜き、中前に落ちる決勝2点打。「柿木に『打って返せよ』と言われてました。あの場面で打てたのは自信になります」とエースの激励に応えた。

 真冬の決断が、真夏の大舞台につながっていた。根尾、藤原が1年夏から出場機会をつかむ中、大阪・泉ケ丘東中時代にボーイズリーグ日本代表の4番も務めた石川は定位置をつかめなかった。木製バットで臨んだ昨年末の台湾遠征が、転機になった。「バットを振り抜かなければ打球は飛ばない。低く強い打球を打つことが大事」と意識し、4割超えの打率を残した。しぶとさ、粘り強さを好機で発揮できるようになった。この日の5回。思いきりバットを振り抜けたのも「台湾での経験があったからです」と言った。

 北大阪大会準決勝・履正社戦で1点を追う9回無死一塁でバントを失敗し、併殺。逆転勝ちの試合後、大泣きした。「チャンスは必ず来るから」と中川主将がかけてくれた言葉を石川は忘れない。学校で大荷物を運ぶ教員を見かけたら手助けに走る優しい石川が「甲子園ではみんなを助ける」と目の色を変えた。準々決勝・浦和学院戦で学校別最多となる春夏71号で球史を塗り替え、この日は自身の失敗を取り返す“1人リベンジ”で甲子園春夏戴冠に王手。金足農の輝星に挑む銀河系軍団。石川も、主役の1人だ。【堀まどか】