第63回全国高校軟式野球選手権大会が明日24日、兵庫県(明石トーカロ球場ほか)で開幕する。南東北代表の仙台商(宮城)が5年連続16度目の出場。東北勢として10年の能代以来、8年ぶりの全国制覇を目指す。最速136キロのエース佐藤らいむ投手(3年)を中心に、南東北大会で史上初のV5を飾った仙台商は、25日に天理(奈良)と1回戦で激突する。

 進化した佐藤らが仙台商を初優勝へ導く。昨年は優勝した中京学院大中京(東海・岐阜)に準々決勝で完敗し、準優勝した97年以来20年ぶりの4強入りを逃した。背番号1はこの敗戦を鮮明に覚えている。2年生エースとして先発したが初回に6失点。「先頭打者に四球を与えて、いきなり調子が狂ってしまった。立ち上がりの大切さを身に染みて感じた」。それから1年-。当時の悔しさを忘れないように両親が録画してくれた準々決勝の投球映像を、4日に1度は寝る前に見続けてきた。

 「手投げで全然下半身が使えていなかった」と課題を見つけ、フォームを修正。現在は下半身を使いながら投げることを意識し、「1年前よりもフォームがなめらかになり、制球が安定した。変化球でもカウントを取れるようになった」と成長を実感する。冬の間は練習前に1時間半のウエートトレーニングを行い、体重は4キロ増の70キロに。球速も132キロから4キロ上昇した。

 7月の南東北大会では平工(福島)との準決勝で、5者連続を含む12奪三振で1安打完封。決勝でも仙台工(宮城)を6安打6奪三振で完封した。連投にもかかわらず隙のない投球を披露した。「あの時の敗戦があるから今の自分がある。全国大会で優勝し、昨年の雪辱を果たしたい」と表情には自信がにじむ。

 16年に優勝した天理との初戦へ向け、同校の応援を大音量でグラウンドに流しながら練習するという独特の対策を講じた。西山康徳監督(36)は「昨年、中京学院大中京の応援に圧倒されてしまった。選手たちが力を出せれば優勝できる。そのために、本番に少しでも近い状況で練習させたかった」と、準備に抜かりはない。雪辱を果たすとともに、悲願の頂点を目指す。【神稔典】