秋季北海道大会は、10地区のトップを切って札幌地区が開幕し、初の甲子園出場を目指す札幌大谷が10-0の6回コールド勝ちで初戦を突破した。196センチの長身左腕、阿部剣友(けんゆう)投手(1年)が、6回に3番手として公式戦初登板。1回無安打無失点2奪三振と好投し、試合を締めた。

長身を存分に生かした。10点差をつけた6回から登板した札幌大谷・阿部は、右足をダイナミックに振り上げ左足に全体重を乗せると、長い左腕を真上から豪快に振り下ろした。先頭打者から2者連続、直球での空振り三振。続く3番打者のどん詰まりの打球を自らが失策し、出塁を許したが、次の4番を遊ゴロに打ち取って試合を締めた。

デビュー戦での1回無安打2奪三振に「身長を生かせるよう、上から投げることを意識した。ブルペンから調子が良くて、全力で投球できたのが良かった」。この秋が初めてのベンチ入り。初戦から起用した船尾隆広監督(47)は「制球はいい方。今日も初めての公式戦だったが、しっかりストライクを取れていたのは良かった」と評価した。

ダルビッシュ有と同じ196センチから投げ下ろす直球が武器。北斗大野中時代は軟式でプレーしていたため、慣れない硬球で左肩を痛め、5月に2週間離脱した。「硬式はボールが重い。余計な力が入ると痛めることを知った」。教訓を生かし、復帰後はリリース時の力みを抑えると、120キロ台だった球速が130キロ台前半まで伸びた。

ポテンシャルの高いルーキーに、船尾監督はさらなる進化を期待している。身長も入学時からまだ1センチ伸びている。「あの高さから投げると打者は怖いはず。身長も2メートルまで伸びてくれたら」。投げる前に1度、上体を後ろに傾け左足に体重を乗せる独特のフォームも、細かい修正はせず、投げやすい投法で、のびのび投げさせている。

今夏の南北海道大会は、初戦で札幌光星にコールド負けを喫した。スタンドで応援していた阿部は「先輩たちの強い思いを感じた。何とか少しでもチームに貢献し、センバツ切符を勝ち取りたい」と前を向いた。ベールを脱いだ大型左腕が、初の甲子園切符を引き寄せる。【永野高輔】