旭川、北見、十勝、函館、室蘭の5地区で代表決定戦9試合が行われ、旭川地区では創部20年の旭川明成が、13-9で旭川工を下し、14年夏以来13季ぶりの道大会出場を決めた。5回までは8点差を追いかける劣勢も、6回から9回に12点奪い、大逆転勝利を果たした。道内10地区20代表が出そろい、20日には全道大会(30日開幕、札幌円山ほか)の組み合わせ抽選が行われる。

旭川明成がコールド負け寸前から、驚異の粘りを見せた。2点差まで追い上げた8回1死満塁、4番庄子哲平(2年)は外角の変化球に反応した。「直球待ちだったのでタイミングがずれたけど、とにかく思い切り振り抜くことだけを考えた」。当たりはボテボテだったが、うまく一、二塁間を抜け、右前に転がった。

走者2人が生還し同点、3人目は本塁でアウトになったが、庄子は送球間に二塁まで進塁した。続く5番吉村真斗(1年)の打球を遊撃手がファンブルすると、迷わず本塁へ突進し、豪快なヘッドスライディングで、勝ち越しの生還を果たした。この回、打者12人、6安打で7得点。庄子は「こんな結果になるとは。自分たちもびっくり。あきらめなければこういうことが起きることが分かった」と喜んだ。

社会人野球の旧北海道拓殖銀行(たくぎん)投手だった河井貴智監督(47)は、7回の攻撃前に「ここでコールド負けを防げたら、何とか流れは来るぞ」と選手を鼓舞して送り出していた。6回終了時点で7点差。無得点なら敗退する崖っぷちのこの回、四球を挟み3連打で2点、さらに野選で1点を追加し3点を奪った。機を見た監督の一言が、大逆転へのスイッチになった。

今夏は、旭川実との地区2回戦の初回7失点で意気消沈し、7回コールド負けした。その試合も先発していた庄子は「みんな声が出なくなりベンチが暗くなってしまった。今日は劣勢でもムードを明るくしていこうとみんなで話していたのが良かった」と言う。惨敗の経験も、選手を成長させていた。

創部20年の節目に13季ぶりの道大会切符をつかんだ。「特別な年。こういうときに少しでも甲子園に近づけたら」と庄子。どんな劣勢からでもはい上がる不屈の精神力で、まずは02年以来16年ぶりの全道1勝を狙う。【永野高輔】