秋田商が能代工を延長13回に3-2でサヨナラ勝ちし、2年連続17度目の優勝を果たした。エースで5番の塚田亮輝主将(2年)が13回を投げ切り、決勝打も放った。秋田商は20日に開幕する秋季東北大会(青森)に出場する。

秋田商軟式野球部に「小さな巨人」が現れた。162センチ、60キロのエース左腕・塚田は小柄な体を目いっぱい躍動させて、13回を1人で投げきった。母校の大先輩ヤクルト石川をほうふつとさせる巧みな投球術で相手打線を翻弄(ほんろう)した。「自分はパワーとスピードがあるわけじゃない。緩急をつけて勝負しないと」。最速126キロの直球に110キロ台のスライダー、90キロ台のカーブを織り交ぜ、11安打を浴びながらも14奪三振2失点と粘った。

完封目前の9回に2点を失い同点に追い付かれ、延長10回からはギアをさらに上げた。「エースで、主将でもある。チームを勝たせたかった。投げながら声を出して、雰囲気が下がらないように心掛けた」。11回には2安打を浴びたが動じず、低めに集める粘りの投球で無失点。1年夏からエースを任される塚田の粘り腰が光った。

最後は自らのバットで決めた。13回無死一、二塁。5番塚田は力まずに4球目のベルト付近に来た外角直球をさばいた。逆らわずに逆方向のレフトへ流し打つと、打球はぐんぐん伸びて、相手左翼手の頭上を破った。「芯に当たったので打った瞬間、いったと思った。強い打球は意識していた。打球が伸びてくれた。うれしい」と胸を張った。

投打で活躍した石川2世は「石川さんを意識したことはない。冬の練習で緩急も球速も伸ばして、もっと成長しないと」と謙遜したが、2年連続出場の東北大会については「去年は1勝止まり。出る以上は優勝したい」と目を光らせた。硬式は金足農が甲子園準優勝と国体1位、軟式は能代が国体準優勝を飾った。「秋田県勢の躍進に刺激は受けている。自分らも続きたい」。軟式版「小さな巨人」が、大きな1歩を踏み出した。【高橋洋平】