札幌新川の179センチ上手投げ左腕、秋山向太(2年)が今春センバツ出場の札幌第一を1安打完封に抑え、北海道大会に弾みを付けた。

最後の打者を三飛に打ち取った秋山はグラブを1度ポンとたたくと、笑顔で整列を作るナインのもとに駆け寄った。「つかれていたけど、1人で投げ抜こうと思っていた」。7回1死から5番山田に左前に運ばれノーヒット・ノーランこそ逃したが、その後も崩れず9回123球の熱投で勝利を呼び込んだ。

悔しさが快投につながった。昨秋の北海道大会は2回戦で負傷したエース右腕、太刀川将一(3年)に代わり、駒大苫小牧との3回戦で公式戦初先発。1人で投げ抜いたが0-3で敗れ、点差以上に実力差を感じた。井口寛人捕手(3年)は「太刀川がケガをして自分が出ないといけなくなるという状況を経験したことで精神的に成長した」という。冬場は筋力トレーニングや走り込みで下半身を強化。ソフトバンク、巨人で142勝を積み上げた杉内俊哉氏(38=現巨人2軍投手コーチ)の投球術をまとめた本で直球、変化球の腕の振りを学び、可能な限り近づける工夫をしてきた。

直球こそ120キロ前後だが、スライダー、チェンジアップ、80キロ台のカーブで打者31人に与四球5、奪三振3も、27アウト中15個を内野ゴロで打ち取るなど昨春王者を手玉に取った。

札幌第一に「センバツ枠」が与えられていたため、15日の代表決定戦前で両チームの道大会出場は決まっていた。今大会2試合連続先発の太刀川に代えて、背番号12の2年生左腕を起用した新井田猛監督(57)は「ボールを動かそうという工夫が見えた。頑張った」とほめた。隣で聞いていた秋山は「いつも怒られてばかりですけど今日はよかったです。できすぎですね」と白い歯を見せた。