持ち前の豪快な打撃は披露できた。しかし、上り調子だったはずのピッチングでは自滅してしまった。「3番・右翼」で先発出場した吾妻中央(群馬)の主砲・土屋柊人外野手(3年)は「勝てると思ったのに自分が試合を壊した」と唇をかんだ。

168センチ、75キロ。上背こそないが、がっしりした体形で、高校通算41本塁打を誇る。この日はオリックス吉田正を参考にしたフルスイングで市太田の2投手から計3安打。4回に右中間フェンス直撃の三塁打で出塁し、5番打者の適時打で先制のホームを踏んだ。

2校が統合して昨年4月に開校した吾妻中央に野球部の練習場はない。校舎から車で約10分離れた廃校舎のグラウンドを使用しているが、硬式球による打撃練習は禁止。バドミントンのシャトルや軟式テニス球を使って打撃練習を繰り返す。「硬式球を打てない不安はあるけど、その分振り込んでいるし、ウエートトレに時間を割いてきた」と、ハンディを力に変えて打撃力をアップさせてきた。

しかし、1点を追う7回に2番手で登板し、5安打5失点。1週間前の練習試合で144キロを計測した直球が走らず、集中打を浴びた。「力みすぎてフォームがばらばら…」。天国と地獄を味わった高校生活最後の試合だった。【片倉尚文】