旭川北が稚内大谷を3-0で下し、前回出場の06年以来13年ぶりに初戦を突破した。最速145キロの右腕エース伊東佳希(3年)が2安打無四球、14三振を奪い完封した。これで地区から3試合27イニング無失点46奪三振。主戦の快投で04年以来15年ぶりの夏甲子園を目指す。

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旭川北の伊東が2度ほえた。最後の打者をワンバウンドになる縦スライダーで仕留めると「しゃあっ」と叫んだ。捕手から一塁手にボールが転送され振り逃げを図る打者走者のアウトを成立させると、右拳を握りしめこの日一番の叫び声を再び球場に響かせた。13年ぶりの北大会1勝を挙げたエース右腕は「緊張していたけど、勝ててほっとしている」と白い歯を見せた。

奪三振ショーは止まらない。地区2戦で計32三振を奪った快投を、北大会の舞台で再演した。「スライダーが良かった。相手が直球を狙ってきていたのでかわせました」。この日は130キロ後半の直球と投球の約7割を占めたスライダーで、毎回の14奪三振2安打無四球完封劇。「強打者からたくさん三振を取れて自信になった」と喜んだ。

最速145キロの直球を生かすために変化球を磨いた。冬場の投球練習ではプレート板からホームベースまでの中間に高さ約2メートルのネットを置いた。手首を使ってネットを越すように投げることで、球にスピンをかける感覚を養った。さらに夏に向けてドジャース前田健太(31)を参考にツーシームの握りのままで投じる縦横2種類のスライダーを習得。投球の幅が広がり「ボール球を振らせることができている」と納得顔だ。

06年以来の道大会進出にOBからは激励が毎日のように届く。「注目されるのはうれしい。今日も人がたくさんいて力になった」。昨秋から公式戦7試合を1人で投げ抜いてきた。ベンチではチューブを使って肩を動かし冷やさない工夫もしている。笹森敦監督(51)は「4日前には変化球が曲がらなくなって心配したが、期待通りの投球してくれてほっとした」と話した。

13年ぶりの初戦突破、8強進出は通過点。目標は04年以来の甲子園出場だ。伊東は「味方が1点取ってくれるまで、何イニングでも0点に抑える」。3度目の聖地切符まであと3勝だ。【浅水友輝】