鉄腕が投げきった。南北海道大会決勝で北照が延長14回の死闘の末、札幌国際情報を4-3で下し、同校初の2年連続となる5度目の夏の甲子園切符をつかんだ。

エース桃枝(もものえ)丈(3年)が14回193球を投げ、小樽地区予選3回戦から6試合連続完投。計60イニング845球を投げ抜いた。昨夏は初戦で沖学園(南福岡)に2-4と惜敗。無尽蔵のスタミナを誇る右腕を軸に、夏の甲子園初勝利を目指す。

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飛んだ。延長14回2死、桃枝は投前に高く跳ね上がった打球に飛びつき左手を伸ばした。「抜けると思った」ボールが、ぎりぎりでグラブに入った。大事に一塁側へ走り、落ち着いて送球。自ら試合を締めると、右手を力強く空に突き上げ、歓喜の輪に加わった。前日の準決勝・駒大苫小牧戦からの連投で2日計318球。「9回以降は苦しかったけど、それだけの練習をやってきた。必ず味方が点を取ってくれると信じて気力で投げた」と振り返った。

一度燃え尽きた男が、よみがえった。昨夏限りで野球部を辞めようと思っていた。打撃投手として南大会優勝に関わり、甲子園にも同行。もうここには来ることはないと、聖地でキーホルダーやタオルなど甲子園グッズを大量購入し、北海道に戻った。そして新チーム始動の朝、母ゆかりさん(46)にぼそっと「もう行きたくない」とつぶやいた。その日は母の後押しで登校も、無断で練習を欠席した。

上林弘樹監督(40)に話を聞いてもらった後、帰宅。その夜、昨夏の優勝エース原田桂吾(国際武道大1年)ら複数の先輩と札幌市内の焼き肉店で食事をし、思いの丈をはき出した。原田にも「お前がいないと甲子園にいけない」と強く諭された。恩師や、先輩の声がなければ、この日の桃枝はいなかった。

今春、地区代表決定戦で小樽双葉に初めて敗れると、夏に向け臨時コーチに入った13年センバツ8強左腕の大串和弥氏(24)から「お前が最後まで1人で投げきる気持ちでいけ」とエースの心構えをたたき込まれた。水川大地投手(3年)が右尺骨骨折で離脱。どん底からはい上がった男は少しずつ心を磨いていった。

重圧に崩れそうなときは、姉由美さんの娘でめいのひよりちゃん(4)が支えてくれた。時間があれば、姉の携帯電話に連絡し、ひよりちゃんとテレビ電話し、癒やされた。「ここまで、ひよりに勇気づけられてきた。甲子園でも勝って、恩返しがしたい」。愛らしい勝利の女神に、今度は甲子園での夏初勝利を届ける。【永野高輔】