幸運の招き猫パワーで甲子園夏初勝利を狙う。第101回全国高校野球(8月6日開幕、甲子園)の南北海道代表、北照が22日、小樽市内の同校で優勝報告会を行った。

今夏、地区から全7試合で先発し6戦連続完投で845球を投げ抜いた鉄腕エース桃枝(もものえ)丈(3年)は、今春から寮の裏にすみ着いている猫にも餌をあげ優勝“報告”。チームで世話を始めてから公式戦7戦全勝という幸運の猫からエネルギーをもらい、聖地での快投につなげる。

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大事な“チームメート”に、お礼のキャットフードを届けた。同校体育館での報告会を終えた桃枝は、伊藤陸主将、岡田将弥捕手(いずれも3年)と、選手寮の裏をのぞき込み、猫の名を呼んだ。

「スラパン!」。スライディングパンツの略だが、草むらの中から赤茶色のしま柄の猫が、ひょっこり顔を出した。

今春の地区予選で小樽双葉に敗れた直後、寮の前に現れた猫に、最初に餌を与えたのが桃枝だった。「ご飯の残りの鶏肉をあげたら、とてもなついていてくれた」。校長にも許可を得て、チームで時間があるときに餌をあげ続けた。名前に大きな意味はないが、会話の行き違いで岡田が「スラパン」と発したところから名付けられた。

猫の世話を始めてからは公式戦7戦無敗。選手がバスで出発するときは見送り、試合から戻ると出迎えるようになった。見送りと出迎えの際は前足をそろえ、姿勢を正すようなポーズでみつめる。親しげに近寄って来るが、触ろうとすると逃げていく。上林弘樹監督(40)が寮前に選手を集めて話をする際は、輪の隣で一緒に話を聞く。人間のようなしぐさをする猫に桃枝は「すごく愛着がわいたし、スラパンのおかげで南大会を優勝できた。甲子園にも力を送ってほしい」と“後押し”をお願いした。

春センバツで2勝した13年にも白猫「トミ」がすみ着いており、夏の聖地1勝を目指す現チームにとって、まさに吉兆。上林監督も「幸運の猫だ。何かある」と話した。

前夜、エース原田桂吾(国際武道大1年)から桃枝のもとにLINE(ライン)が入った。酷暑の聖地での投球に向け「走ってから投げるインターバル投球をしっかりやった方がいい」という助言だった。走塁直後の投球で疲れを感じたという経験談に基づいており、桃枝は「現地の実際に暑いところでやって体をならしたい」。幸運の猫にパワーをもらい、フィジカル面も整え、万全の態勢で夏初勝利をつかむ。【永野高輔】

◆北照と幸運の猫 12年夏の南北海道大会準決勝で札幌一に敗れた夜、野球部寮に迷い込んできた白猫を「トミ」と名付け世話を始めた。すると、その日から公式戦無敗で、同年の秋季全道大会を制した。明治神宮大会では2勝し4強入り。翌13年春のセンバツに出場し菰野(三重)尚志館(鹿児島)を下し8強入り。さらに同年夏の南大会を制して甲子園出場を決めた。ちなみにトミは放浪癖があり、14年夏は大会前に行方不明になり、チームも小樽地区で敗退した。