明徳義塾が入念に仕込まれた「馬淵マジック」で高知の1年生エース森木大智投手を攻略し、2年ぶり20度目の夏甲子園を決めた。

1点リードの3回、森木が2番手で登板してきた。その代わりっぱなをたたいた。1死一、二塁から4番安田陸捕手(3年)が左前へ適時打。直前にはタイムがかかり、馬淵史郎監督(63)から「短く持て」のアドバイスが送られていた。普段から短く持つバットをさらに短く持ち直し、森木の145キロ直球をコンパクトに振り抜いた。

さらに勝利へのタクトを振る。四球で1死満塁。打線を組み替え、この日6番に入れた小泉航大(3年)がスクイズを決めた。5回にも2死三塁で、準決勝2安打を理由に打順を1つ上げた5番奥野翔琉外野手(2年)が中前適時打。春夏甲子園で通算50勝の名将は「全てがウチのいい方にいった。打順の組み方もよかった。勝てる時は、こんなもんでしょう」。森木対策で2カ月前から150キロ近いマシンを打ち込み、1回戦からは対戦を見越して「(バットを)振り回すな」と徹底させてきた。

マジックは投手起用にも。先発は今夏初登板の2年生左腕新地智也。大会直前まで強豪校相手に好投を見せていたジョーカーを決勝まで「辛抱して」温存していた。満を持して登板した背番号11は「体力は残っていました」と、高知打線を9回4安打1失点に封じた。試合前に先発投手について「(OBで現ヤクルトの)市川」と語るなど報道陣に煙幕を張っていた? 指揮官は「全て、この大会のゲームプランとしてうまくいった」。練りに練られた魔法が、聖地でも見られるか注目だ。【奥田隼人】

◆明徳義塾 1976年(昭51)創立の私立校。生徒数709人(女子196人)。野球部も76年に創部。部員数103人(マネジャー1人)。甲子園出場は春18度、夏20度目。02年夏の甲子園優勝。主な出身者はDeNA伊藤光、ヤクルト市川悠太、プロゴルファーの松山英樹、横峯さくら。所在地は高知県須崎市浦ノ内下中山160。崎本宏明校長。