センバツ中止が発表された3月11日から2カ月。出場予定だった星稜(石川)の林和成監督(44)は、LINE(ライン)を通して選手たちの心に寄り添う日々を送っている。

約3カ月後、8月10日に開幕予定の夏の甲子園は、新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれているが、共に戦うその日へ、思いをはせる。

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あれから2カ月。林監督はセンバツ中止発表の翌日、3月12日朝の選手たちの表情と言葉が忘れられない。「私の想像以上に冷静で、しっかりと現実を受け止めていたんです」。ミーティングで心境を問いかけると、小俣諒侑外野手(2年)は「『人間万事塞翁(さいおう)が馬』だと思います」と答えたという。幸、不幸は予測ができないことのたとえ。「選手の言葉通り、今、幸せだと思うことが未来の不幸につながったり、今の不幸が未来の喜びの種となることもある。この子たちの強さを感じた。あぁ、このチームで夏、戦いたいと思いましたね」。

昨年は春、夏と甲子園を経験し、夏は準優勝。新チームは甲子園経験選手6人を中心に「前チームを超えるには全国制覇しかない」と突き進んできた。昨秋は北信越大会で優勝し、明治神宮大会に出場。現在の状況下でも、頂点への思いが全く揺らいでいない選手たちの姿に、林監督は「この子たちなら信じても大丈夫」と確信したという。

選手の心に寄り添う毎日が練習自粛期間を支えている。ここまで同監督が自宅でのトレーニングに課したメニューはわずか2種類。腕立て伏せ10回10セットと、両足を前後に開くランジをフロントとバックステップで各30回3セット。それ以外は自主性に任せている。4月末からは、グループラインをスタート。2、3年生をそれぞれ4グループずつに分け、1週間に1度、当番の選手が体調や活動内容、勉強時間に現在の心境を報告する。林監督の信頼どおり、各自が課題以外に、走り込みや振り込み、フォーム作りとそれぞれの練習に励んでいる。

林監督は、この時期は決して後退ではないと実感している。ラインを通して選手との会話が増えた。「フォームを見てもらえますか?」「僕に合ったトレーニングは?」。野球の質問だけでなく、お薦めの本や進路の相談もあり、「選手に気づかされることが多いですよ」。一方通行ではない気軽なコミュニケーションが、今を支えている。

夏の甲子園開幕は約3カ月後に予定されている。不透明な状況にも、林監督は選手たちへ「明けない夜はないし、やまない雨もない。今の過ごし方次第で、今を感謝できる未来は必ず来るよ」とメッセージを送信した。心をひとつに、夏を待ち望む。【保坂淑子】