楽天で13年プレーした元外野手の枡田慎太郎氏(32)が23日、仙台一(宮城)硬式野球部のコーチに就任し初指導した。新型コロナウイルスの影響や定期テストなどでそろわなかった3学年計46人(マネジャー含む)の部員も初めて一堂に会し、「仙台育英にも、いつかはギャフンと言わしたいですね。夢はでっかく、甲子園に行きたい」と宣言した同氏とともに、県代替大会(7月11日開幕)に向けて再スタートを切った。

屈指の名門進学校に、楽天日本一を知る名打者が加わった。枡田氏は13年、得点圏打率3割6分4厘と勝負強さを発揮し、球団初の日本一に貢献。また故野村克也監督、故星野仙一監督のもとで野球を学ぶなど、名将の教えを財産に、高校野球の舞台に戻った。「星野監督みたいにグラウンドでは厳しくても、プライベートでは優しく、愛のある指導者になりたい」と恩師の姿を理想像に挙げた。

同校は1923年(大12)の県勢初出場(当時は仙台一中)など、全国選手権に3度出場した古豪。昨秋は県8強入り、野球部員から3月に現浪2人の東大合格者を輩出するなど文武両道を貫く。枡田氏のコーチ就任は、元プロの目から技術力向上のため、OB会を通じて打診し実現した。

今夏はコロナ禍で甲子園が中止となり、同氏は「球児の気持ちを簡単に分かってあげることはできない。でも、悔しさを乗り越えて、また自分で挑戦していかないといけない。将来につながる言葉をかけたい」。自身も智弁学園(奈良)では甲子園の土を踏めず、プロ入り後も2軍暮らしの悔しさを味わった。苦楽の経験を球児たちに還元する。

森拓真主将(3年)は小学生の時に、同氏が優勝メンバーとして活躍する姿をテレビ越しで見て感動した。「素直に驚きとうれしさがあります。高いレベルでプレーされた方。アドバイスを積極的に聞いて、優勝して東北大会に出たい」と心強い援軍を喜んだ。【佐藤究】

◆枡田慎太郎(ますだ・しんたろう)1987年(昭62)7月8日生まれ、京都市出身。中学時代は京都田辺ボーイズで3年春に全国制覇。智弁学園では2年夏に3打席連続本塁打。05年高校生ドラフト4位で楽天入団。18年に引退。1軍通算成績は412試合で打率2割4分6厘、25本塁打、147打点。現役時のサイズは178センチ、80キロ。右投げ左打ち。