青森山田が宿敵・八戸学院光星との「青森頂上決戦」を8-5の逆転で制し、3年ぶり12度目の夏王者に返り咲いた。先発したプロ注目右腕・小牟田龍宝(3年)は5失点降板も、6回から引き継いだ高橋主樹投手(3年)が4回打者12人をパーフェクトに封じる完全救援。打っても6回に同点適時打、8回にはダメ押しスクイズを決めた。不振だった4番平野時矢内野手(3年)も同点の7回に値千金決勝ソロ。「打倒光星」に燃えたナインが、最後の直接対決で雪辱を果たした。青森県代表として、8月9日からの東北大会(宮城・石巻市民球場)に臨む。

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異例の夏にも、優勝シーンは歓喜に沸くいつもの光景だった。青森山田・高橋が最後の打者を遊飛に打ち取ると、ナインは人さし指を真っすぐ突き上げながら、マウンド上で喜び合った。「優勝の瞬間にマウンドに立っていたのは初めて。うれしかったです」と高橋。パーフェクトに輝いた背番号10は、仲間と何度も抱き合った。

コロナがなければスタンドは超満員で、外野の芝生席も全校生徒の応援で埋め尽くされるはずだった。静かに進む決勝にも、高橋は冷静だった。エース小牟田がまさかの5失点KOで、6回から2番手でロングリリーフ。「(小牟田)龍宝も頑張っていたので、強い気持ちで向かっていこうと」。6回は力のある直球とキレのある変化球を織り交ぜ、3者連続三振でチームに勢いを与えた。「光星は意識する相手。夏はずっと負けていたので、やり返すつもりでした」。3年連続の顔合わせ。1年時はスタンドで、昨夏はベンチで涙を流した宿敵へ、雪辱の思いを全45球に込めた。昨秋も優勝しており、新チーム結成から県内公式戦負けなしを達成した。

青森の「おかわり君」も奮起した。準決勝まで15打数2安打の4番平野が5-5の7回先頭で、身長168センチ、体重105キロの体いっぱいに使って内角直球をフルスイングした。今大会2号は「本家」西武中村をほうふつさせる滞空時間の長い軌道で、左翼芝生席に突き刺した。ベンチに戻ると兜森崇朗監督(41)から両手上げて祝福され、「監督さんを優勝させたい一心でした。最後に結果が出て良かった」と4番の重責を果たしホッとした。

前日27日は兜森監督と打撃フォームの修正に取り組んだ。「トップの位置を変えたり、足幅を小さくしました。アドバイスのおかげで打てた」と感謝した。準決勝を勝った26日の夜は、兜森監督から大量の焼き鳥の差し入れがあった。「エールだと思い、数え切れないくらい食べました。焼き鳥がホームランにつながった」と愛くるしい笑顔。同監督が「今日はステーキかな?」と優勝のご褒美を話していたことを聞くと、「マジですか? 楽しみですね」と満面の笑み。おかわり放題で大好物の肉にかぶりつき、優勝の味をかみしめる。【佐藤究】

青森山田・兜森監督(3年ぶり優勝に)「選手たちは100点満点です。甲子園大会がなくなっても、乗り越えて、ここまでよくやってくれた」