<高校野球千葉県大会:館山総合3-9一宮商>◇7日◇2回戦◇長生の森公園野球場

試合の裏に、高校野球ならではのドラマがあります。「心の栄冠」と題し、随時紹介します。

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一宮商には双子の“剣豪”がいる。その名も、長島武蔵内野手(3年)と小次郎投手(3年)。刀をバットとボールに持ち替え、戦いに挑んでいる。

歴史上の剣客を地でいく2人だ。3回戦の館山総合戦は弟・小次郎が投手、兄の武蔵は一塁で、そろって先発出場。繊細な性格の小次郎は序盤、緊張から制球が定まらず、2回に連続四球を与えた。すると、すかさず強気な武蔵がマウンドへ。「しっかりしろ」。ミットで小次郎の頭をポンとたたき気合を入れたが、そのまま降板。一方の武蔵は、積極的な打撃で2安打を決めた。

歴史好きな父が「その道を究める」という思いを込め名付けた。小2で野球を始め、いつも2人で練習。「どっちが野球が上手かで、いつもケンカ。でも気が付くと楽しそうに野球の話をしながら仲直りしていた」と母智子さん(48)は目を細める。高校入学後は、送球で悩む武蔵に、小次郎がタイミングをみて声をかけて支えた。時には寄り添い、時にはライバルとして。切磋琢磨(せっさたくま)し成長してきた。

卒業後はともに就職希望。野球は今大会が最後になる。「悔いのない大会にしたい」と声をそろえた武蔵と小次郎。まだ負けられない。次は4回戦。東金との一戦に臨む。【保坂淑子】