甲子園に新しい風が吹いた。京都国際が柴田(宮城)との春夏通じて初出場同士の対決を制した。

3-3の延長10回に中川勇斗捕手(3年)の右前適時打などで2点を勝ち越し、反撃を1点でしのいだ。韓国系学校をルーツに持ち、韓国語の校歌が流れた。

常総学院(茨城)は敦賀気比(福井)をセンバツで初適用のタイブレークの末、東海大菅生(東京)は大会第1号含む2本塁打で聖カタリナ学園(愛媛)を下した。

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春風に乗って甲子園に響いたのは学校のルーツだ。京都国際ナインは胸を張って、韓国語の校歌を歌い切った。初出場で初白星。小牧憲継監督(37)は「子供たちが束になってかかってくれて、うれしい初勝利になった」と目尻を下げた。

おはこの展開だった。7回は逆転した直後に同点とされて延長へ。それでも小牧監督は「うちは常にああいう場面ばっかり。ある意味慣れています」と動じなかった。指揮官から「お前が決めてこい」と送り出された中川が「ここで1本出すのが僕の使命だと思った」と右前適時打。5番辻井もバスターエンドランで右翼線を破る適時二塁打を決め、1点差で逃げ切った。

自然と生まれた合言葉が「終盤勝負」だ。19年は夏の京都大会決勝で9回サヨナラ負けし、秋も準々決勝で5点リードの9回に8点を奪われ逆転負け。チームが味わった2年前の苦い歴史について、山口吟太主将(3年)は「自分たちの頭の中にずっとあります」。新チーム発足後のミーティングでは終盤に強いチームを作ると誓い合った。昨秋の近畿大会準々決勝では6-0から1点差に迫られる中、しぶとく逃げ切って初の甲子園切符をつかんだ。

韓国文化や国際交流を学ぼうと在校生は日本人も多く、野球部員も全員日本人だ。だが07年に就任した小牧監督は「誰にも相手にされなかった」と当時を振り返る。関大で阪神岩田と同期生で、銀行員から教員に転職。中学生のチームにあいさつに行けば、門前払いが当たり前だった時期もある。そんな難路を歩んで歴史的な1勝を得た。「OBの顔が思い浮かびました。生徒たちには甲子園を楽しんでもらいたい」。春の聖地でその名をさらに刻む。【望月千草】

◆韓国系学校が前身の京都国際の校歌は韓国語で、球場のビジョンや中継映像では歌詞がハングルと日本語訳のテロップ付きで映し出された。NHKと毎日放送では「日本語訳は学校から提出されたものです」との説明もついた。スタンドで見守った朴慶洙校長(62)は「(創立の)1947年から歌っている校歌です。学校の校歌として理解してもらいたい」と語った。

▽京都国際・森下(先発で5回2失点)「(1回に2失点も)あれ以上、点をやったらチームが悪くなる。制球中心で、丁寧な投球を心掛けました」

 

▽京都国際・平野(1点差に迫られた最終回について)「ピンチだったけど、いつも通り、自分の投球をしようという気持ちで。気持ちで負けない。強気で行きました」

 

▽京都国際・辻井(10回に適時二塁打)「その前の打席、チャンスで打てなかった。延長に入って『単打、単打でつないで点を取ろう』とベンチで話していました」

 

▽京都国際・武田(7回の満塁機で逆転の適時三塁打)「(右足故障で)秋に出られなくてチームにいいことができてなかった。集中して1本打てました。ホッとした」