左手の先天性四肢障害を抱えている神島のエース右腕、笠松子龍(しりゅう)投手(3年)が力投むなしく7回9失点で敗れた。

序盤から失点を重ねて、5、7回に、それぞれ2ランを被弾した。それでも、6回2死二塁では外角速球で見逃し三振に封じるなど、意地も見せた。「結構打たれて、自分の責任だと思いました。最少失点で抑えようと思ったのですが」と険しい表情だった。

笠松子は生まれつき左手の手のひらがなく、指も短い状態で、この日も左投手用グラブを左手に添えた状態で投げた。捕球時は右手にグラブをつけて捕球し、投球直前にグラブを左手に置き換える動作を繰り返す。打撃時は左腕のアンダーシャツでバットを巻き付けるように持って、右手を添えてスイングする。それでも「(グラブの)持ち替えは自分で(練習して)やりました。困ったりしたことはありません」と話した。小学3年時から本格的に野球を開始。「先に弟がやっていたんです。父の影響ですね」。弟は同校の1学年下で三塁を守る笠松大翔だ。野球が好きで昨夏のイップスも乗り越えてマウンドに立っている。

今春から背番号1を背負うが、初戦で敗退し、悔しさを味わった。中瀬学監督(41)は「3人投手がいますが、その中で一番、安定しています。全体的にまとめてくれるので1番をつけている。角度のある球を投げられる」と信頼する。最速は「130キロくらい」でカーブ、スライダー、チェンジアップを駆使する。

笠松子は小学校では校長から、生まれながら右手首がないハンディキャップを乗り越えて大リーグで活躍したジム・アボット投手の存在を教わった。この日は136球の熱投。「1番なので自分で流れを作って試合を作らないといけない。(目標は)甲子園です」と言い切った。夏に向けて、前を向いた。