鳥取大会で、急転試合出場が決まった米子松蔭が21日午前10時半からどらドラパーク米子市民球場で、境と2回戦を戦う。学校関係者の新型コロナウイルス感染拡大で大会の出場を辞退したが、復帰を認められた。「不戦勝取り消し」を了承した境ナインは20日、境港市内の同校近くで練習。金谷範光硬式野球部長(56)が対戦決定の背景を説明した。

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鳥取に、すがすがしい風が吹いた。境は、コロナ禍で17日の2回戦を出場辞退した米子松蔭に一度は“勝って”いた。だが、19日に急転。米子松蔭の野球部関係者に感染者や濃厚接触者がいないと確認され、試合出場が認められた。鳥取県高野連の打診に試合実施を了承した境ナインは、勝負を心待ちにする。

21日の対戦が伝えられると、選手は「やろう、やろう」「頑張るぞ」と声を掛け合った。金谷部長は「さわやかでした。シンプルに勝負にかける。シード校に勝たないといけない。ずっと準備していた。気持ちを切り替えてやってくれている」と思いを代弁。春県大会優勝校に堂々と挑む。元阪急の350勝右腕、米田哲也らを輩出した伝統校。甲子園に春夏10度出場し、昨秋は県4位。強敵と戦い、勝って8強入りを狙う。

17日は不完全燃焼の“勝利”だった。メンバー交換締め切りの午前8時10分になっても、米子松蔭ナインの姿は球場になかった。出場辞退が伝わり、不戦勝となったが、とても喜べなかった。「シーンとして。うつむいていた。想像力がある。自分たちに置き換えたのだと思う」と金谷部長。ライバルは、白球を愛する仲間でもある。

公式戦の仕切り直しは異例で、心のコントロールも容易ではない。「何かあっても、やるべきことをやるしかない。周りの状況に右往左往していたら勝てない」。選手が日ごろ、指導者から教えられていることだ。毎日、情熱を傾けてきた練習の成果で真の1勝をつかみにいく。【酒井俊作】

○…大会参加が認められた米子松蔭の当初の大会辞退に、境も戸惑った。17日午前9時開始で予定された試合のメンバー交換に間に合わず、米子松蔭は大会を辞退。金谷部長は「学校関係者1人の感染で野球部の出場辞退に強い違和感を覚えたのは確かです」と複雑な心境だった。ガイドラインや大会規定にのっとった措置だったが、SNSで話題沸騰。「仮に試合をする運びになったら、受けないといけないと監督とも話していました」と明かした。

<米子松蔭の鳥取大会復活VTR>

◆7月16日 深夜に学校関係者1人の新型コロナウイルス感染が判明。野球部員や野球部関係者との接触はなく、独自の抗原検査で陰性を確認。

◆同17日 学校が県高野連に、保健所で検査を受けるために試合の先延ばしを要請。だが保健所の検査開始は午前8時30分で、陰性が証明できず。同9時開始の境との2回戦を辞退。

◆同18日 米子松蔭から大会復帰を求める嘆願書が県高野連に出される。昼に西村虎之助主将(3年)がツイッターで「何とか出場する道を模索していただけませんか?」と訴え。

◆同19日 県高野連が、不戦敗取り消しと21日に2回戦を行うと発表。