<高校野球西東京大会:早実15-0福生>◇22日◇4回戦◇市営立川球場

都立の大エースの夏が終わった。福生の伊藤寛人投手(3年)はプロ注目の逸材。ソフトバンクの宮田善久スカウトも「あの子はすごい。伸びしろの塊。体をしっかり作れば将来面白いですよ」と、うなった存在だ。しかし、この日は制球に苦しんだ。伊藤は「相手が早実さんということもあって、変な緊張が体にありました」と1回1/3で7四死球を与え、降板。ここまでの2戦、私学相手を圧倒してきたが、甲子園常連校を前に力尽きた。

投手を始めたのは中学・昭島シニアの時から。現在では140キロ超えの速球を投じるが、当時は速球派ではなく、しかも2番手だった。「自分より速い球を投げる投手が何人もいました。なので変化球で勝とうと」と必死にもがいた。その時に独自研究で覚えたカーブが、今では武器の1つになっている。

都立校に進学した理由は、家族を思ってのことだった。「兄が大学に通ってたので、学費が安い都立に行くと決めてました。自転車で通える距離だったので」と福生を選んだ。学校での練習は、定時制の授業の関係で17時まで。水はけが悪く、雨が降ると数日間はグランドが使えなくなってしまう。そんな環境の中だったが、自宅では兄の器具を借りて筋トレを繰り返し、足りない練習量を補った。成長期が重なったこともあり、3年間で体重を13キロ増やし、15キロ以上球速を上げて挑んだ夏だった。

卒業後は、上のステージで野球を続けたい。「まだまだふがいないです。1から体作りを行って、課題の制球力を磨きたいです」と意欲抜群だ。過去に川口寛人(元巨人)、川口隼人(元楽天)と2人のプロ野球選手を輩出している永島良幸監督(52)は「あの2人は寝る間も惜しんで野球をしてました。そんな部分があの子にも付いてくれば、おのずと道は開けてくると思います」とエールを送った。都立で培った3年間の経験を胸に、未完の大器は次の舞台で大輪の花を咲かせる。【阿部泰斉】