春のセンバツが1カ月後に迫り、京都国際に注目している。昨秋の近畿大会は8強だったが、センバツ切符をたぐり寄せ、戦力評価を「A」とした。今秋ドラフト候補で最速143キロ左腕の森下瑠大投手(2年)や145キロ右腕の平野順大投手(2年)が両輪で、武田侑大内野手(2年)は公式戦2本塁打の強打を誇る。投打のバランスがいい。
なによりの強みは「心」だろう。誤解を恐れずに書けば京都国際ナインにとって甲子園は憧れの聖地ではない。初出場を決めた1年前も、小牧憲継監督(38)は「私自身は甲子園、甲子園という感覚がなくて、1人でも上の世界で活躍できる選手を育てたい。大学、社会人、プロとね」と話していた。ガチガチに緊張せず、伸び伸びと戦った昨年の甲子園での戦いぶりを見ればうなずける。夏は初出場で4強。今大会は優勝をうかがう有力候補になる。
「甲子園至上主義」ではない。ある関係者は「目標は甲子園じゃなくて、あくまで通過点。自分を売り込む場でもあると思います」と明かした。3年連続でNPBドラフト会議で指名され、いまや、継続的にプロ野球選手を輩出する学校になりつつある。19年日本ハム上野響平、20年オリックス釣寿生、ソフトバンク早真之介。そして昨秋は中川勇斗が阪神に指名された。
08年から同校で指揮を執る小牧監督がゼロから強化システムを築いた。「僕はどうしても甲子園に行きたかった。ただ、大学で誰も野球を続けないとか。監督の将棋の駒みたいに、監督の采配だけで勝っても、能力は上がらない。最初は人が集まりませんでした。何で認めてもらおうか、となったとき、そういうスタイルになった」。甲子園にとらわれず、育成を重視する指導を探り続けたが生徒の成長で手応えを得た。大型内野手の申成鉉(しん・そんひょん)が08年ドラフト4位で広島に指名された。
指揮官は「急に強くなったと言われるんですが、そんなことはないんです」と苦笑いした。3年生の申が引退した直後の秋は選手9人で大会出場。「捕手が3アウト目で凡打したら悲惨なんです。投手はずっと待ちぼうけ。審判に『早く』と言われて『僕が(投手の投球を)受けに行っていいですか』と聞くと『監督はダメです』と言われました」と指揮官は振り返る。地道に改革し、自主性を重んじる方針に共感した親が選手を預けるようになった。
京都成章、関大をへて、滋賀銀行の銀行マンから高校野球の指導者に転身して14年目に入った。「私は二遊間にこだわりが強い。二遊間だけはどこにも負けたくない」。狭い校庭でのゴロ捕球やワンバウンドのボール回しなど守備を鍛え抜く。京都の高校野球界の「新しい顔」はこれまでの価値観にとらわれず、全国に打って出る。【酒井俊作】

