東北勢悲願の大旗白河越えへ-。仙台育英(宮城)の挑戦が始まる。「目指せ、日本一! 獅子の投手陣」と題し、仙台育英が誇る投手10人(1年生を除く)を2回にわたり紹介する。第1回は2年生4人。最速145キロ左腕・仁田陽翔投手は、ロッテ佐々木朗希投手(20)の後輩にあたる大船渡一中(岩手)出身。三振を奪う投球スタイルはうり二つだ。春の東北王者、2年ぶりの夏の甲子園出場に向け、校章に描かれているライオンのごとく獅子奮迅の快投を見せる。

   ◇   ◇   ◇

仁田の仕上がりが万全だ。「状態はすごく上がっているので、この状態を維持していきたいです」。直近の練習試合では9回4安打無失点。9者連続を含む17奪三振をマークするなど、2年生左腕の独壇場だった。キレのある最速145キロの直球を軸に、球速差を意識した変化球で三振を奪う投球スタイルが確立されている。「球威には自信を持っている。自分は三振を取っていく投手だと思っている」と胸を張った。

冬から春にかけて、着々と成長しはじめた。昨秋は地区大会、県大会でメンバー入りするも、東北大会はベンチ外。制球難から不振に陥り、ストライクを入れにいった球を打たれる悪循環。今冬は、グラブをはめた右手の位置、右足を踏み出した時のリリースポイントなどを重点にフォームの安定性を求め、ネットスローで理想の形を体に染みつけた。「自分の投球フォームの再現性が足りなかったけど、フォームが安定してきている。9回を投げて四死球は2個くらい。平均4個は少なくなった」と結果は、数字に表れている。

大船渡一中出身の仁田にとってロッテ佐々木朗は偉大な先輩だ。「憧れの存在でもありますし、同じ中学出身でうれしく思っています」。佐々木朗の弟とは小、中で同じチームでプレー。別々の高校に進学しても交友関係は続いており、地元に戻った際には会う間柄。今オフには佐々木朗の直筆サイン色紙を2枚もらった。「実家に1枚、寮に1枚飾っています」と笑顔で話した。

まずは春を制し、夏へ弾みをつける。春季宮城県大会は5月14日に開幕し、県上位2チームが東北大会(6月7日開幕、福島)に出場する。「毎試合、自分の最大のパフォーマンスを発揮して、勝利に貢献していきたいです」と決意をにじませた。夏は2年ぶりの甲子園返り咲き、その先の日本一に挑む。成長著しい期待のサウスポーがチームを頂点へと加速させる。【佐藤究】

<山田脩也 二刀流で勝利に貢献だ>

“二刀流”でチームを引っ張る。山田脩也内野手は、1年夏から背番号「6」をつけ、投げては右腕チーム最速の144キロをマークしており、ポテンシャルの高さを秘める。「野手も投手も好きなので、チームの勝利に貢献できればと思っています」。昨夏は主力として試合に出場したが、県大会4回戦敗退。「夏の一発勝負の怖さを知った。背番号6をいただいたのに、活躍することができず、先輩の足を引っ張ってしまった」と悔しさを口にする。「目標は、東北で初の甲子園優勝。日本一を基準にしながら練習していきたい」と語った。

<田中優飛 危機感も制球力で勝負>

最速143キロ左腕、田中優飛は「秋から状態は上がっているけど、それ以上に周りの状態も上がっている。自分が練習した分、追いつけると思うのでしっかりやっていきたい」と危機感を胸に高みを目指す。持ち味は抜群の制球力。仁田が三振を奪うスタイルなら、田中は打たせて取るスタイルだ。田中は「(仁田とは)常に一緒にいる。タイプが違うので比較はしないですけど、レベルの高い投手だと思うので、良い存在になっている」。1年春から公式戦デビューを果たした両左腕。切磋琢磨(せっさたくま)しながら、お互いを刺激し合っていく。

<高橋煌稀 公式戦へ負けられない>

最速143キロの本格派右腕・高橋煌稀は初のベンチ入りを目指す。「良い投手がいっぱいいる中で、自分も負けていられない気持ち」と公式戦デビューに向け、闘志を燃やす。入学から1年がたち、成長を実感。「1年を通して制球が安定してきて、高めに抜ける球が少なくなった」。入学時から140キロをマークするも「荒れ球タイプ」だった。今冬は約3キロのサンドボールで指先を鍛え、課題の制球を克服した。「コースに投げ分けながら打ち取れている」と手応えを口にした。