父より大きな右腕が、神宮のマウンドを思う存分楽しんだ。現役最多の通算182勝を誇るヤクルト石川雅規投手(42)の長男、東海大高輪台(東東京)・石川大耀(だいや)投手(3年)が、駿台学園戦で完封勝利を挙げた。直球にスローカーブなどで緩急を使い、低めに集めて9回4安打2奪三振。93球で締め、父の本拠地で、100球未満の完封「マダックス」も達成した。

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神宮球場のダイヤモンドの中心で、笑顔が輝いた。東海大高輪台・石川は、9回を3者凡退に抑えると、ほっとした表情を見せてチームメートとハイタッチをかわした。父ヤクルト石川の本拠地で初登板し、完封勝利を挙げた。キレのある直球を投げ下ろし、時にはスローカーブで緩急をつけ、球を低めに集めた。「父と同じマウンドで、ワクワクしてドキドキな気持ちでした」と振り返った。

初戦の先発を告げられた数日前から緊張していたが、「とにかく楽しんで」という偉大な父からの言葉を胸に大舞台で目いっぱい投げた。父がプロで1度達成した100球未満の完封「マダックス」は07年9月25日広島戦(広島市民球場)。神宮では、息子が一足先にやってのけた。「神宮は投げやすくて、楽しかったよと伝えたい」と笑顔で話した。

上げた左足を少し止めて間を取る投球フォームは、父の姿を見て取り入れたもの。変化球の握りも参考にして、スローカーブ、スライダー、チェンジアップ、カットボール、ツーシームと多彩な変化球を操るスタイルも同じ。最速133キロで「僕も球が速くないので。コントロールと球種、タイミングをずらすように」と意識する。

大きな違いは、身長だ。高校生になってから一気に伸びて、167センチ左腕の父よりも16センチ大きい183センチ。ミズノのグラブは、父のモデルを使用。ベルト部分を少し変えている。

4回戦まで勝ち上がれば、再び神宮が会場となる。「3年生と少しでも長い夏を送りたい。勝って、戻ってこられるように。また父と同じ舞台で試合をしたいです」。もう1度あのマウンドを味わうために、帰ってくるつもりだ。【保坂恭子】

 

◆石川大耀(いしかわ・だいや) 2004年(平16)12月22日生まれ。東京・港区出身。横浜市内の病院で2930グラムで誕生。幼稚園から野球を始める。小6の16年にはヤクルトジュニアとして12球団ジュニアトーナメントに出場。東海大高輪中から同高に進学。今春都大会は父と同じ背番号「19」を着けた。4歳下の弟は栄寿(えいす)君。183センチ、74キロ。右投げ右打ち。

 

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