鹿児島・奄美大島の県立校、大島は決勝で涙を飲んだ。プロ注目で最速146キロ左腕、大野稼頭央投手(3年)は、9回7安打3失点。今春はセンバツに出場したが、春夏連続出場の夢は途絶えた。閉会式が終わると、塗木哲哉監督(54)を中心に最後のミーティングが行われた。塗木監督の言葉は以下の通り。

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「みんなは今までできなかったことをやってくれたんだよ。なんていうかな。人が勝手に決めつけて『島から甲子園は無理だ』とか、『夏の決勝とか無理だ』とか、『粘り強い試合はできない』とか。いろんなことを言われたかもしれないけど、みんなはできたんだよ。だから、やればできる。自分の可能性を信じて、みんなの可能性を信じて、これからの人生を頑張っていけばいい。みんなは野球というものを通していろんな人に教えてくれたし、俺もみんなから学んだ。開会式から閉会式まで最後までこれたこと、これが一番大事なこと。最後はもう勝負の綾だから。本当に勝負の綾。ちょっとしたところ。普段はできてるけど、今日はできなかったりね。だけどそれは仕方がないじゃん。それが野球なんだから。うん。なんでもかんでもそうはうまくはいかない。そのことをまた学んで、また次に生かしていけばいい。また次の野球をやる子もいるんだよね。その子たちは次のステージで頑張ればいいし、硬式はしなくても軟式とか準硬式とかね。あとは自分たちの進路に向けて頑張っていこう。悔しいよ。今日よりも明日が悔しいし、(鹿児島)実業が甲子園で野球をやっているのを見ると、もっと悔しくなる。だけどそれも、それも勉強だから。な。しっかりと感じていくしかないんだから。いい試合だった。いい試合だったよ? 最後まで自分たちの野球ができたんだから。決して恥じることはない。俺もね、みんなにお礼を言いたい。(春は)初めて甲子園に行かせてもらって、自分の教え子たちの思いをずっとつないでやってきたから、その子たちの思いもみんなは果たしてくれた。それはすごくうれしかったし、ありがたかった。だから今回、夏の甲子園には行けなかったけど、みんながやってきたことを見て、次なる世代が、大島高校の次なる後輩たちが、達成してくれる日が来る。そしたらそれをみんなは、スタンドで、テレビの前で、職場で応援してあげればいい。それが追い風になるよ。なんでもかんでも自分たちだけが取ろうとしたって、うまくはいかない。流れの悪い中、みんなよく頑張った。感心でした。感心だったと思うよ、本当に。涙は出るかもしれないし、あの時こうだったらとかいろいろ思うかもしれないけど、だけどそれは全て終わったこと。その反省を生かして次の1歩に。大事なのはそこだよ。最後の最後まできちんと片づけをして、スタンドとグラウンドの清掃をして、『大島高校は負けたけど最後までしっかりやったな!』って言ってもらえるようにしよう。スタンドの方たちは一生懸命応援してくれたよ。みんなの姿が力になる。本当にすごいプレッシャーの中で、本当にみんなは頑張ったと思うよ。(スタンドには)今でさえこんなに人がいて、テレビカメラもたくさんいるなかでよ、このプレッシャーの中でみんなやってきたんだから。だけどね、それは力になるから。分かった? 俺が言うから間違いない! ハハハ。さぁ胸張って、島に帰ろう」。

指揮官の言葉が熱を帯びるごとに、大野をはじめ、ナインは号泣した。スタンドからは「ありがとう!ダイコウ!」「胸張って帰ってこい!」と温かい拍手が送られた。塗木監督の言葉通り、離島の球児たちは胸を張っていい。