高校通算37本塁打をマークする山村学園のスラッガー、坪井蒼汰内野手(3年)の夏が幕を閉じた。
決勝進出を懸けた聖望学園との準決勝。今大会2本の本塁打を放った坪井のバットから、快音は聞かれなかった。空振り三振、四球、中飛、遊飛。3打数ノーヒットに終わり、チームは1点差で敗戦。試合後は小さな声で、何度も「悔しい」と繰り返した。
ニュースを見れば、同世代のスラッガーの話題が目についた。特に高松商の浅野翔吾外野手(3年)は、同じ右打者として気になる存在だった。
自身の本塁打数については「物足りない」と顔をしかめたが、1本でも多くのアーチを重ねるため、打てなかった打席と真剣に向き合ってきた。
家族や仲間に打撃の動画を撮影してもらい、何度も見返した。冷静に分析し、修正すべき課題を洗い出した。
「その失敗があるから、今の本数につながった」
悔しそうな表情を浮かべながらも、静かに胸を張った。
試合後の取材が始まる前。敗戦直後の坪井は、ぼうぜんと立ち尽くしていた。その様子を見かねた岡野泰崇監督(46)から、笑顔で声をかけられた。
「坪井、楽しかったか?」
言葉を受け取った途端、帽子で顔を覆った。押しとどめていた感情が、涙となってあふれ出した。
「監督さんがいたからここまで来れました。最後にそういう言葉をかけてもらえて、少し楽になりました」
肩の荷が下りたような表情で、そう言った。
進路は明言しなかったが、「行けるならプロに行きたいです」と言葉を残した。
野球の楽しさが詰まった本塁打を放つために。いつか目標をかなえるために。
これからも打てなかった打席と向き合って、もっともっと大きなスラッガーへ成長を遂げる。【藤塚大輔】