日本高野連から1通のファクスが届いたのは午後1時27分だった。甲子園の大会前PCR検査結果のお知らせに「陽性者:10校、26名」と出ていた。驚きでもなかった。昨今の新型コロナウイルス感染状況を考えれば、予想よりも少ないと感じたくらいだ。

緊急対策本部は集団感染と判断された4校の試合日程を大会第7日に組み込むと説明。ある運営関係者は「できる限り、出してあげたい」と言った。今春センバツでは開幕前日に辞退した京都国際について、直前まで初戦の「繰り下げ」を模索していたと聞いた。コロナ禍の非常時がいまも続く中、高校球児が出場できるよう、できる限り柔軟な措置を取ったといえる。

別の広報文は、4校の初戦が2回戦になる不公平感を指摘する声にも触れ「お互いさまの精神、互譲の精神でご理解を」と記す。いまは平時ではない。この文面の通り、イレギュラーな状況でも、選手が憧れの舞台でプレーできるよう、温かいまなざしで見守りたい。

ただ、ひとつ心に引っかかることがある。「PCR検査」であぶり出される集団感染のとらえ方だ。オミクロン株BA・5は重症化しにくいとされる。未知のウイルスだった20年初頭ならまだしも、無症状者も多い、いまの感染状況で総数として「集団感染」と判断される現実が切ない。発熱など有症状者を隔離する感染拡大防止は当然だが、弱毒化しつつあるいま、無症状者の扱いなど医科学的な検証に入れないものか。

日本高野連は政府や自治体の方針をもとに、ガイドラインを策定する。肝心の政府は感染拡大防止を呼びかける一方、行動制限をしていない。感染症法の分類見直し回避など「矛盾」が高校球児を巻き込む混乱の根源にあるように映ってならない。【アマチュア野球担当=酒井俊作】