海星(長崎)のプロ注目で最速147キロ右腕、宮原明弥(はるや)投手(3年)が、今大会の完封一番乗りで初戦突破に導いた。8安打を許しながら無失点。海星の投手が甲子園で完封するのは、76年の「怪物サッシー」こと、元ヤクルトの酒井圭一以来だ。次戦は12日に天理(奈良)と2回戦を戦う。

   ◇   ◇   ◇

手負いの右腕が、マウンドを守りきった。海星の宮原は5回途中、右手中指に血マメができる。それでも加藤慶二監督(48)に入学以来初めて続投を志願した。「初戦は難しい。自分がマウンドを降りると流れが変わってしまうと思った」。アドレナリン全開で9回8安打無失点。今大会の完封一番乗りで「昨日からずっと完封してやると思ってました。達成できてよかったです」と安堵(あんど)した。

最速147キロを計測する直球に、スライダー、チェンジアップがさえた。「緩急をつけて投げることができた」。3度も三塁に走者を置きながら、要所締め。海星の甲子園完封は、76年にネス湖の「ネッシー」になぞらえて「怪物サッシー」の異名を取った、元ヤクルトの酒井圭一以来、46年ぶりだ。

3学年上の兄・真弥(まなや)さんも海星卒。3年だった19年夏の長崎大会直前に腰痛を発症し、スタメンからメンバー外になった。甲子園切符を手にするも、兄が出場することはなかった。弟の明弥は「兄は甲子園でプレーできなかったので、自分がプレーするところを見てもらいたかった。今日はいいピッチングができてよかったです」と言う。試合前には「思い切り投げて来いよ」と激励を受けた。真弥の無念は、明弥が晴らす。まずは初戦を突破した。

加藤監督は「内容があまりに良かった。県大会はリズムが悪かったので、この試合は転機かもしれない」と絶賛した。離島の対馬出身。生後間もなく患った心臓病を克服し、今ではプロ複数球団が興味を示す。宮原は「次もいいチームだと思う。緩急、コースに投げることを目標にやっていきます」と頼もしかった。【只松憲】

◆長崎県勢の完封勝利 夏は99年崎田忠寛(長崎日大)が日大三に5-0で勝って以来23年ぶり。海星の投手では76年酒井圭一が2回戦の福井を8-0、3回戦の崇徳を1-0と連続完封して以来46年ぶり。県勢の2桁得点で完封勝ちは春夏を通じて初めて。

◆宮原明弥(みやはら・はるや)2005年(平17)3月3日生まれ、長崎県対馬市出身。豊玉小1年時に「豊玉小ソフトボールクラブ」でソフトボールを始まる。小島中では軟式野球部に所属。海星では1年秋からエース。直球の最速は147キロ。変化球はカーブ、縦のスライダー、カットボール、フォーク。182センチ、90キロ。右投げ右打ち。

◆怪物サッシー 76年の海星のエース右腕、酒井圭一が、英ネス湖の幻の怪獣「ネッシー」になぞらえて呼ばれた。同年夏の甲子園で2回戦の福井、3回戦の崇徳(広島)で2試合連続完封。準決勝でPL学園(大阪)に敗れたが、当時の4強は現在も海星の最高成。同年ドラフト1位でヤクルトに入団し、90年に現役引退。その後はヤクルトでスカウト課長などを務めた。NPB通算成績は215試合で6勝12敗4セーブ、防御率5・08。

【ライブ詳細】全国高校選手権第3日速報>>