昨秋の県王者で、今夏の甲子園に出場した能代松陽が“大一番”を制し、2年連続の秋季東北大会(10月10日開幕、山形)出場を決めた。ノースアジア大明桜に逆転勝ち。0-1の6回、1番大高有生主将(2年)が決勝の2点適時三塁打を放った。5回まで打線はわずか1安打と沈黙。中盤に巡ってきたたった1度のチャンスに勝負強さを発揮した。

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手に伝わる感触から大高主将は確信した。バットを振り抜いた瞬間、雄たけびを上げる。「よっしゃー!」。ナインの歓声とともに打球が一直線に伸びていく。左中間を真っ二つに破っていった。チームを2年連続の東北大会出場へ導き、秋の県連覇に王手をかける一打となった。「手応えはあった。(打球が)左中間に抜けてくれてうれしかった」。

闘志をたぎらせ、中盤のワンチャンスで勝負を決めた。0-1で迎えた6回無死一、三塁。「気持ちで…。最後は気持ちだった」。自らに言い聞かせ、覚悟を決めて左打席へ。カウント1-1からの3球目。外角高めの直球を仕留めた。一走も生還し、起死回生となる逆転適時三塁打をマークした。「『絶対に走者をかえす』。それだけでした」と振り返った。

今夏の甲子園メンバーの1人で、新チームでは主将を務める。5回終了時点。ベンチ前で選手に“喝”を入れた。「攻めないと勝てないぞ!」。打線は5回までわずか1安打と沈黙。積極性を欠き、後手へと回っていた。気持ちを入れ直した最初の攻撃。6回。先頭の8番柴田大翔捕手(2年)が二塁打で出塁。続く保坂大悟内野手(2年)が三塁線へ絶妙なセーフティーバントで好機を拡大させた。中盤に訪れた勝負どころ。最後は大高主将の一振りで接戦をものにした。大高主将は「序盤は、積極性がなかった。試合に勝てて良かった」とホッとした表情を浮かべた。

この日の試合を大一番と位置づけていた。工藤明監督(46)は「この一戦がすごく大事でした。勝てば次へとつながり、負ければシーズンオフの可能性が出てくる」。強豪私学を逆転で下した意味は大きい。決勝は由利と対戦する。「優勝にこだわりたい」。大会2連覇の看板を引っさげ、来春センバツ出場を占う舞台へ乗り込むつもりだ。【佐藤究】